体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
不使用取消審判(不使用による登録取消審判) |
意味 |
不使用による登録取消審判とは、一定期間登録商標が使用されていないことを理由として商標登録を取り消す審判をいいます(商標法第50条)。
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内容 |
@不使用による登録取消審判の趣旨
商標法は、権利の安定性を期待して、現実の使用の有無を問わずに所定の登録要件を登録する登録主義を採用しています(商標法第18条)。
しかしながら、商標法の本当の保護対象は、商標を使用することで商標に蓄積される信用であると考えられるので、登録後の長期間に亘って使用されない登録商標は、保護対象である信用が蓄積しないか、一旦蓄積した信用も消滅していると考えられ、実質的な保護価値がないと考えられます。
こうした不使用商標が存在することで他人の商標の選択の余地が狭められるのは本当に困ったことです。
そこで登録主義の弊害防止のために不使用による登録取消審判が導入されました。
A不使用による登録取消審判の請求要件
(A)主体的要件
何人も本審判を請求できます。公益性の強い問題であり、直接の利害関係がなくても業界の利益代表として所定の団体が公益の立場から請求することも考えられるからです。
(B)客体的要件
(a)商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれもが、商標を使用していないことを要します。
使用権者の使用により蓄積された信用も保護するべきだからです。
使用されている商標と登録商標との間には、少なくとも社会通念上の同一性が存在することを要します。
その同一性の判断に関して審査段階での商標出願人の言動が考慮される場合があります。 →禁反言の原則のケーススタディ1(商標の同一性を否定した例)
(b)継続して3年以上日本国内で使用していないこと。
日本国内に信用が存在することが必要だからです。
(c)指定商品・指定役務に関して登録商標が使用されていないことを要します。
これが専用権の範囲だからです。
B請求の効果
(A)被請求人が登録商標の使用又は不使用に関する正当理由を証明した場合には登録取消を免れます。
なお、本審判の請求前3か月以内に審判が請求されることを知って使用した場合(いわゆる駆け込み使用)には、たとえ使用の事実があっても登録取消を免れません。
→不使用による登録取消を免れる場合
(B)登録取消の審決が確定したときには、審判請求の登録の日に遡及して登録が取り消されます。
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他法との関係 |
権利対象の不使用を理由に登録を取り消すような大胆な規定は、他方には存在しません。特許法では、不実施の場合には行政機関の裁定により実施を望むものに通常実施権を許諾するに過ぎません。これも行政機関による私的自治への介入という点では思い切った規定ですが、それでも特許権をなくしてしまうという性質のものではありません。これは特許出願人は技術的思想である発明を国家に開示し、出願公開などにより発明が文献的的利用されることで産業発達に貢献するからです。
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留意点 |
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