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@隔離観察・対比観察の意義
物の観察方法には前述の対比観察と隔離観察とがあると言われています。
具体的な例を示すと、対比観察は、下図の如く、対比する商標を同じ場所に並べて同時に観察することです。そうすると、両者の商標の細かい部分まで気が付くことになります。
他方、隔離観察は、対比する商標のうちの一方を隠して、他方の商標のみを観察し、当該商標の観察を終了してからしばらく時間をおいて他方の商標を隠し、一方の商標を観察します。すなわち、現実に見ている一方の商標と、観察者の記憶にある他方の商標とを比べて、類否を判断することになります。従って、商標の構成のうち細かい部分に縛られずに、商標の重要な部分に観察のウェートが置かれることになります。
A商品又は役務(以下「商品等」という)との関係での観察方法の選択
(a)商標権は、商品等の出所混同を防止する観点から付与される権利であり、商標権の効力範囲や商標の出願の審査における商標の類否判断もその観点から行われます。
→出所混同とは
(b)例えば需要者が過去に商品等を購入して気に入ったので、商標を手掛かりに同じ商品等を購入しようとしたところ、類似の商標が存在するために誤って別の商品等を購入してしまったというのが、商品等の出所混同です。このとき需要者は過去の記憶の商標と自分が現に見ている商標とを比べることになります。
従って現実の商品等の購入に即した観察方法は隔離観察であり、商標法では古くから商標の類否は隔離観察によって判断するべきという司法の判断が示されています(明治42(オ)第56号)。
B隔離観察による類否判断の実例 例えば商標「Coca Cola」と商標「Cola
Cola」とは隔離観察によれば類似すると判断された事例があります(昭和27年(行ナ)第33号)。 →隔離観察のケーススタディ1
C隔離観察とその他の観察手法との観察
原則として商標は全体として観察するべきですが、商標の構成を商標の要部と付記的部分とに分解して要部観察することが妥当な場合があります。こうした付記的部分か否かの判断は、隔離観察により判断するべきです。
→商標の観察方法
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