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 商標に関する専門用語
  

 No:  089   

商標の類似CS/長い商標の称呼類似/商標出願

 
体系 商標制度に関する事項
用語

商標の類似のケーススタディ(長い商標の称呼類似)

意味  商標の類似とは、2つの商標の外観・称呼・観念の何れかが相紛らわしい結果として、商品又は役務(以下「商品等」という)の識別標識として同一・類似の商品等に使用されたときに、取引の経験則上から出所混同を生じ得ることをいいます。

 先願に係る他人の登録商標と同一・類似であって同一・類似の商品等に使用されるものでないことは商標出願が登録査定されることの条件の一つです。
 ここでは長い商標の称呼類似に関してケーススタディします。


内容 @長い商標の称呼類似の意義
 長い商標の場合には分離観察されるか否かがポイントとなることが多いです。
分離観察とは

 すなわち、構成要素A及び構成要素Bからなる商標“AB”と、商標B’とを比較する場合であり、前者がAとBとに分離できるのであれば、BとB’とが類似する場合です。

 一般的には、文字数が多く長い商標ほど、分離観察される可能性が高いと考えますが、必ずしも文字数だけではなく、構成要素同士の結びつきの強さが問題となります。

 構成要素の一部が指定商品・指定役務との結びつきが強い場合(例えば「飲食物の提供」に対して「上海」)には、文字数が少なくても分離観察され、
 指定商品等との結びつきがそれほどでもない場合(例えば「即席中華そばのめん,即席春雨」に対して「北海道」)には、文字数が多くても分離観察されない
 という場合もあります。

 以下、商標Aと商標Bとが類似であるときには、“A=B”と、非類似であるときには、“A×B”と表示します。

A商標が類似とされた事例
[事例1]

[対比する商標]“上海ドラゴン”=“ドラゴン”

[事件の表示]不服2002−3132

[審決の日付]

[指定商品・指定役務]第42類「飲食物の提供」

[審判官の判断]
本願商標は、上記のとおり「上海ドラゴン」の文字よりなるものであるところ、前半の「上海」の文字と後半の「ドラゴン」の文字とは外観上一体的に構成されているとはいえ、その構成文字全体をもって特定の意味合いを有する一連の語句として一般に親しまれているとみるべき格別の事情は見出せない。

 そして、構成前半の「上海」の文字部分は、中国華東地区北部の中央直轄都市を表す都市名として、また、同後半の「ドラゴン」の文字部分は「翼と爪を持ち火を吐くという伝説の龍」を表すものとしてそれぞれ容易に認識される語であるところ、都市名は一般に役務の提供の場所を表すものとして随時採択使用されているものであって、自他役務の識別力が無いか又は極めて弱いことに加えて、本願指定役務との関係でみると、例えば中華料理の分野においては、上海固有の食材や味付けを主とした「上海料理」と称される中華料理があり、また、それらの飲食物を提供する飲食店等が「上海料理店」として我が国において親しまれている実情があることを考慮すれば、本願商標に接する取引者、需要者は、「上海」の文字部分を単に役務の質・特性を表したものと認識して、それに続く「ドラゴン」の文字に自他役務の識別標識としての機能を見出し、これより生ずる称呼、観念をもって取引に資する場合も決して少なくないと認められる。

 そうとすると、本願商標からは、その構成文字の全体に相応した「シャンハイドラゴン」の一連の称呼を生ずるほか、「ドラゴン」の文字部分に相応して「ドラゴン」の称呼をも生じ、仮想動物の「ドラゴン」の観念を生ずるものといわなければならない。

 これに対して、引用商標1は、「ドラゴン」の文字を書してなるものであるから、該構成文字に相応して「ドラゴン」の称呼を生じ、仮想動物の「ドラゴン」の観念を生ずるものである。(後略)

 してみれば、本願商標と引用各商標とは、外観上相違する点を考慮してもなお、「ドラゴン」の称呼及び観念を共通にする類似の商標といわなければならない。

B商標が非類似とされた事例
[事例2]

[対比する商標]“北海道味物語”ד味物語”

[事件の表示]不服2009−17019

[審決の日付]平成22年7月30日

[指定商品・指定役務]第30類「即席中華そばのめん,即席春雨」

[審判官の判断]本願商標は、「北海道味物語」の文字を標準文字で表してなるところ、同書、同大、等間隔に外観上一体的に表してなるものであり、その構成文字全体から生じる「ホッカイドウアジモノガタリ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。

 そして、本願商標は、構成全体として、「北海道の味についての物語」ほどの観念を生じさせるものであり、「北海道」の文字部分が、地名の意味を有するとしても、これに接する取引者、需要者は、殊更「北海道」の文字を捨象し、「味物語」の文字部分のみをもって、取引に資するものとは言い難く、かかる構成においては「味物語」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識として機能を果たすというよりは、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが相当である。

 そうとすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「ホッカイドウアジモノガタリ」の一連の称呼及び「北海道の味についての物語」の観念のみを生じるものといわなければならない。

 他方、引用商標は、「味ものがたり」の文字を標準文字で表してなるところ、構成文字より「アジモノガタリ」の称呼が生じ、また、「味ものがたり」の語からは、「味についての物語」ほどの観念を生じるものというのが相当である。

 そこで、本願商標と引用商標の類否について検討すると、本願商標から生じる「ホッカイドウアジモノガタリ」の称呼と引用商標から生じる「アジモノガタリ」の称呼は、「ホッカイドウ」の音の有無に明らかな差異があり、相紛れるおそれはない。

Bなお、短い商標の称呼類似に関しては下記を参照して下さい。
商標の類似のケーススタディ(短い商標の称呼類似)


留意点

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