体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
文字・図形の結合商標の類否のケーススタディ3 |
意味 |
結合商標とは、複数の同種又は異種の要素を結合してなる商標であり、その類否はこれらの要素の外観・称呼・観念を総合的に考慮して判断されます。
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内容 |
@結合商標の類否の意義
(a)結合商標の態様として、文字と文字との結合・図形と図形との結合のように同種類の要素の結合、文字と図形との結合・文字と立体的形状の如き異種類の結合とがありますが、ここでは文字と図形との結合商標の類否に関して説明します。
(b)また商標の類否のポイントとして、観念上の統一感があるかどうかがあります。 →観念上の統一性とは(結合商標の)
分離して観察することが取引上不自然であると思われる程度に不可分に結合していないときには、分離観察が可能となります。観念或いは他の2要素から見て一体不可分に結合されていない場合には、結合商標の文字部分を全体から切り離して文字商標と比べられ、類似の商標であると判断される可能性は高くなります。
(c)観念上の一体性の典型例は、文字同士の結合商標において、外国語文字とこれの日本語での読み方を平仮名又はカタカナで2段書きした商標はよくあります。
これと同じ考え方で、例えば図形にこれと同意義の観念を有する文字を添えたり、或いは、多義的な文字部分に対してその意味を特定する文字を添えたりして商標を構成する場合があります。
具体例を挙げれば「ちょこ」という文字に、器の一種であるお猪口の図形を付して構成する商標です。
(d)このように文字と図形との結合の度合いが高くなれば、分離観察が適用されて類似と判断される可能性は少なくなります。
A結合商標の類否の事例の内容
[事例1]平成22年(行ケ)10102号
商標出願人の商標である本願商標“WORLD”が、“w”と“c”とからなるモノグラムと大きくかつやや図形化された“WORLD”の文字と小さく付記された“collezione”とからなる引用商標と類似しないと判断された事例です。
判決では、“ワールドカップ”・“ワールドニュース”の如く他の言葉と結びつき易い“ワールド”の言葉の性質より、「WORLD collezione」(ワールドコレクションの意味)が一体として出所表示機能を営むと考えるべきであり、図形部分は二つの単語の頭文字のモノグラムと考えられる、と判示した例です。
[事例2]不服2011−18473(非類似)
やや図案化されかつ大きく描かれた“OgM”の文字部分と“OIRX Golf
Management”の文字部分とからなる本願商標が、“ORIX/オリックス”からなる2段書きされた引用商標と非類似と判断された事例です。本願商標の商標出願人及び引用商標の商標権者はともに「オリックス株式会社」であり、これらは商号商標です。
審決では、“図形文字である「OgM」が「ORIX Golf Manegement」という文字部分の頭文字であることは容易に理解できる。”とされています。
[事例3]不服2002−12710
大きく描かれかつ図形化された“m”の文字と小さく描かれた“STAGE”の文字とからなる本願商標が、“STAGE”からなる引用商標と非類似と判断された事例です。
ちなみにM-stageはNTTドコモのマルチメディア情報配信サービスを表す語です。
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留意点 |
審判では、商標の外観・称呼・観念のそれぞれに関して、“一体不可分と認めるべき事情”の有無を判断し、そうした事情がなければ商標の類似性を肯定するという傾向がありますが、裁判例では、さらに一歩踏み込んで文字・図形の一体性を判断する場合がありますので、注意が必要です。
→文字・図形の結合商標の類否のケーススタディ2
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