体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
文字・図形の結合商標の類否のケーススタディ5(花・木・鳥) |
意味 |
結合商標とは、複数の同種又は異種の要素を結合してなる商標であり、その類否はこれらの要素の外観・称呼・観念を総合して判断されます。
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内容 |
@結合商標の類否の意義
(a)結合商標の態様として、文字と文字との結合・図形と図形との結合のように同種類の要素の結合、文字と図形との結合・文字と立体的形状の如き異種類の結合とがありますが、ここでは文字と図形との結合商標の類否に関して説明します。
(b)また商標の類否のポイントとして、外観上の統一感があるかどうかがあります。 →外観上の統一性とは(結合商標の)
分離して観察することが取引上不自然であると思われる程度に不可分に結合していないときには、分離観察が可能となります。この場合には、結合商標の文字部分を全体から切り離して文字商標と比較することが可能となるので、類似と判断されやすいのです。
(c)文字と図形との結合の程度としては、大きな文字の周囲に地模様が配置されているとか、或いは、単に図形の上に文字が重なっているという程度では、一般に結合の程度はそれほど高いとはいえません。
(d)これに対して、文字の一部が図形を構成する要素となっているなど、文字と図形とが融合している場合(外観上一体不可分と認めるべき事情がある場合)には、不可分の結合とみられることが多くなります。
A結合商標の類否の事例の内容
[事例1]不服2001−3291
枠と花の図形と“花”の文字からなる本願商標(商標出願人の商標)と、“華”をやや図形化した引用商標とが非類似と判断された事例です。
本願商標から“花”の文字を抽出して引用商標と分離観察すれば類似と判断される可能性が高い事例ですが、審判官は、引用商標の図形部分と文字部分とが一体不可分と判断しました。
本願商標の構成は、枠の中に“花”の文字と花の図形が配置されており、図形の花の茎が花の文字の一部と共通していることに着目して下さい。単純に枠の中に花の図形と“花”の文字を並べていただけでは、異なる結論となっていたと推測されます。
[事例2]不服2007−31582
やや図案化された“Rikka”の文字とヤシの木との結合商標が、“RICCAR/リッカー”の2段書きの文字商標と非類似とされた事例です。ちなみに引用商標の商標権者は「リッカー株式会社」ですので、これは商号商標であると考えられます。本願商標は、“Rikka”の“i”の部分がヤシの木の幹に見立てられていることが特徴的です。
審決によれば、Rikkaの「『i』の文字部分の上には、茶色の椰子の木の実と緑の葉を配し」、恰もiの部分が椰子の木の幹の如く構成され、これにより「特徴のある椰子の木の形状をした図形付きの『Rikka』」のごとき観念を生ずる、と判断されました。
[事例3]不服2007−21219
矩形の図形とやや図案化された“BIG”の文字と“ビッグ”の文字とが結合した本願商標と、鳥の図形と“Big”の文字とが結合した引用商標とが非類似と判断された事例です。
引用商標は、全体として鳥の図形として構成されており、その胴体・脚・羽の一部として鳥の文字が組み込まれていることが特徴です。
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留意点 |
審判では、商標の外観・称呼・観念のそれぞれに関して、“一体不可分と認めるべき事情”の有無を判断し、そうした事情がなければ商標の類似性を肯定するという傾向がありますが、裁判例では、さらに一歩踏み込んで文字・図形の一体性を判断する場合がありますので、注意が必要です。
→文字・図形の結合商標の類否のケーススタディ2
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