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1080
非自明性(進歩性)の判断・物理的置換/特許出願の要件(外国) |
体系 |
実体法 |
用語 |
非自明性(進歩性)の判断(物理的置換) |
意味 |
非自明性(Non
Obviousness)とは、米国特許出願の発明の特許要件の一つであり、所定の判断時点において当業者が自明ではないこと(欧州でいうinventive
step或いは日本でいう進歩性を有しないこと)を言います。
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内容 |
①非自明性の判断の意義
特許出願人の発明(請求項に記載された発明)が所定の基準時において引用例からobviousではないことは、米国特許法においても基本的な要件の一つです。
ここで所定の基準時とは特許出願時(従来は発明時)です。
進歩性の判断手法の一つとして特許出願の発明への示唆が存在するときには自明性(進歩性の欠如)を裏付ける要素となるというものがあります。例えば
・主引用例“A+B+C”に副引用例で開示された要素Dを付加すれば本願発明“A+B+C+D”に想到する
・主引用例“A+B+C+E”の“”に副引用例で開示された要素Dを付加すれば本願発明“A+B+C+D”に想到する
という場合に限りません。すなわち、物理的にそっくり置換したり、付加することが可能でなくても、全体として特許出願の発明に至ることを示す何かを示していれば、進歩性を否定する根拠としては十分です。
②非自明性の判断の内容
(I)354 F.2d 377 (In re Griver)・1966年1月6日判決言い渡し
(a)David
Griverは、マルチターミナル・スタッドの発明について特許出願しました。電子回路の端子として使用される金具の一種です。こうした金具は、筒状の軸部材(シャンク)の一端に、電子回路のシャーシへの取付口である開口部を有し、他端にディスクを付設しており、ディスクの外周部にワイヤーを固定するための小孔を設けています。
特許出願人のそれは、軸部材の内周面を滑らかに形成するとともに、軸部材の他端側にカウンターボア(反対側開口)を有し、そこに別の軸部材を固定できるようになっていました。
特許出願人は、主引用例の軸部材は、カウンターボアを有していないだけでなく、内部にネジきりがしてあるから、副引用例(カウンターボアを開示するもの)の技術要素をそのまま適用することはできないと主張しました。
しかしながら、裁判所は、進歩性の判断をするにあたって、各引用例の技術的要素の構造をそのまま適用できることを要しない、と判示しました。
技術の転用をするに当たり、ネジ切りを省略するなどの小さな設計変更は、当業者が必要に応じて行うことだからです。
(II)642
F.2d 413 (In re Keller)・1981年2月12日判決言い渡し
(a)Keller
Jrはデジタルカウンターで作動するペースメーカー(心臓ペーサー)の発明を特許出願しました。心臓は心房(atrium)が発生する電気信号を心室(ventricle)に伝達して収縮します。信号の伝達には一定の遅れ(A-V
delay)があります。この電気信号が不規則になったり、或いは全く届かなくなったときには、ペースメーカーで心臓を刺激してやる必要があります。
(b)特許出願人のペースメーカーは、デジタルカウンターで作動するので、従来のアナログ式の心臓用ペースメーカー(引用例1)に比べて正確に作動できますが、引用例3には、心臓のペースメーカーに類似の技術にデジタル回路を使用することが開示されていました。
(c)特許出願人は、引用例3の技術は、人間の心臓の治療のための装置ではなく、哺乳類の心臓の研究のために心臓を刺激する装置であり、オシロスコープとが接続されているから、そのまま引用例1の装置に当てはめることができないと主張しました。
(d)裁判所は、特許出願人の主張を退けました。副引用例の具体的な技術手段をそっくり置換しなくても、本願発明に至る何か(本件の場合にはデジタル化)を示していれば十分だからです。
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