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1338 事業の準備(先使用権)/特許出願 |
体系 |
権利内容 |
用語 |
事業の準備とは(先使用権に関して) |
意味 |
事業の準備とは、発明の実施の事業とともに、先使用権の成立要件の一態様であって、即時実施の意図を有し、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様・程度において表明されていることを言います。
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内容 |
①事業の準備の意義
(a)他人の特許出願前に当該出願の内容を知らないで自分の発明をした者又はその者から発明を知得した者が当該特許出願前から発明の実施である事業又はその準備をしていた場合には、いわゆる先使用権が認められます(特許法第79条)。
特許出願とは別ルートで発明を知得した者が開始した事業が当該他人の特許権により使用できなくなり、事業設備が使えなくなって荒廃することは、産業の発達を図る特許法の趣旨から妥当ではないからです。
(b)特許法第79条では、「発明の実施である事業」だけでなく、実施の準備に基づいて先使用権を主張することも認めています。
例えば工場の建設に入った段階では、それなりの投資をしている筈であり、建設途中の設備が無に帰することは、やはり産業の発達に悪影響を及ぼすと考えられるからです。
逆に言えば、先使用権を認めなくても経済活動にマイナスの影響を生ずる程度のものは特許法第79条にいう「事業の設備」には該当しないと解釈するべきです。そうでなければ特許権者の利益を不当に害するからです。
(c)さらに「特許出願の際に」実施の準備が認められるためには、将来のいつか実施をしたいと考えているだけでは足りず、単なる試作・試験・研究の段階を超えて事業を開始するための作業に入った段階に入っていることが必要です。
最高裁は、「事業の実施とは、未だ事業の実施の段階に至らないものの、即時実施の意図を有し、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様・程度において表明されていること」が必要であるとしています。
→事業の準備のケーススタディ1
②事業の準備の内容
(a)例えば、単に頭の中でアイディアを思索していたとか、特許出願の準備をしていたというだけでは、「事業の準備」に該当しません。
(b)これに対して、発明の実施の工場を建設しているとか、工場の建設のための土地を購入したというような場合には「事業の準備」に該当します。
この段階では事業化のために相当の資本が投じられていると考えるべきであり、特許権者との利益のバランスを考えても先使用権を認めることが不合理とは言えないからです。
(c)ボーダーラインとして、製品開発のための課題を解決しようとして設計図面を作成していた段階では、「事業の準備」に該当しないとした事例があります。
→事業の準備のケーススタディ2
(d)さらに他人の特許出願前に一台の試作品を製造していたとしても、それだけで「事業の準備」と認めることはできないとした事例があります。
→事業の準備のケーススタディ3
(e)さらに事業に関するパンフレットを頒布したというだけでは、「事業の準備」と認めることができないとした例があります。
→事業の準備のケーススタディ4
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