体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
損害専門家 (Damage expert)とは[専門家証人に関して] |
意味 |
損害専門家 (Damage
expert)とは、米国の専門家証人の規則上、損害額の評価に関して知識・技能・経験・訓練又は教育により専門家としての適性を有する者をいいます。
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内容 |
①損害専門家の意義
(a)米国の裁判制度では、裁判所の法廷などで陳述する証人は、事実証人と専門家証人とに区別されます。前者は、自分の意見を含まずに客観的な事実のみを陳述しなければなりませんが、後者は専門家としての経験などに照らして自分の意見を陳述することができます。
→専門家証人 (Expert witness)とは
(b)しかしながら、専門家証人だからと言って、常に、客観的で妥当な意見を陳述するとは限りません。
専門家の意見は、当事者の主張に直結することが多く、裁判の行方を大きく左右するものです。従って、審理の基礎として受け入れる(admissible)ことができない証言は、予め排除する必要があります。
(c)証拠の適格性(admissiility)適否を判断する基準として、ダウバートスタンダードがあります。
→ダウバートスタンダード(Daubert standard)とは
(d)専門家証人となる専門家としては、技術的専門家(科学的専門家を含む)、損害専門家、法律の専門家など様々な専門家が含まれます。
損害専門家とは、例えば特許侵害などの損害の金額を評価するための専門家です。
(e)一般に、技術的専門家の証言に関しては、ダウバートスタンダードに違反するとして排除の申し立て(→ダウバートモーションとは)を受けることは、比較的少ないと言われます。
例えば特許発明と係争物との類似性を判断する技術的専門家が証言する場合には、特許出願時の技術水準などを勘案して、技術的な面の類似性を評価します。
こうした場合、原告側の専門家と被告側の専門家とで最終的な意見の結論が異なることはあっても、自然法則などを基礎として評価するのであり、根本的な考え方に大きな違いはないからです。
(f)これに対して、専門家証人の場合には、経済法則などを基礎として評価するため、前述のダウバートモーションを受けることが多いと言われています。
②損害専門家の内容
(a)特許侵害訴訟においては、侵害行為が存在していなかった場合の損害(逸失利益)を算定することが困難な場合があります。
そこで侵害時点で特許権者と侵害者との間にライセンス交渉が行われたと仮定して、そのライセンス料を損害額として算定することが一般に行われています。
→Hypothetical negotiation(仮想交渉)とは
こうした仮想交渉でのライセンス料の金額を導くために専門家に意見を述べさせる場合には、専門家の意見の根拠になる理論も人が作ったものであるため、相手方から証拠として採用するべきでないという申し立てが出される場合が多くあります。
→損害専門家のケーススタディ1
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留意点 |
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