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 パテントに関する専門用語
  

 No:  1484   

マークマン・クレーム解釈の手続/特許出願/禁反言

 
体系 外国の特許法・特許制度
用語

マークマン・クレーム解釈(Markman Claim Construction)の手続

意味  マークマン・クレーム解釈(Markman Claim Construction)とは、裁判の対象となった特許のクレーム中の文言のうちで原告と被告との間に争いがあるものに関して、裁判官が当該文言の意味合い(意義や範囲)を解釈することをいいます。



内容 @マークマン・クレーム解釈の手続の意義

(a)英米法の裁判制度の下では、陪審が事実問題に関して事実の認定を行い、判事が法律問題に関して決定して、判決を出すという役割分担ができています。

(b)そしてMarkman判決では、クレームの解釈(claim construction)は法律問題であり、裁判官の専権事項であると判断されました。

 なお、クレームとは、特許出願人によって予め提出された発明の保護を求める範囲を記載した書面です。

(c)もっとも、特許クレームに関しては事実問題と法律問題とが非常に複雑に絡み合っている場合があります。

 例えばMarkman事件では、発明者(特許出願人)は、洗濯物のクリーニング業の取引に関する発明を、“An inventory control and report system”と表現しました。そして、クレーム中の“inventory”という用語の意味について当事者間の争いが問題になりました。“inventory”の通常の意味は“在庫”であり、“預かっている洗濯物の在庫リスト”のような物を想定するのが普通の感覚です。しかしながら、裁判では、原告は、これを“cash inventory”という意味に解釈するべきであると主張しました。
Markman判決とは

(d)英語では、日本語の“解釈”に相当する用語として、“interpretation”という言葉と“construction”という言葉があります。

 両者は非常によく似た言葉ですが、どちらかというと、“interpretation”は、用語の国語的な意義を解明すること(文理解釈に近い)であり、これに対して、“construction”は、法律効果や立法論も踏まえた総合的な解釈(条理解釈を含む)です。

 用語の“interpretation”(解明)は、陪審が専門家証人の証言を聴取するなどして評決するとしても、判事は必ずしも評決の通りに判決するのではなく、成文法や判例などを踏まえてクレームの“construction”(解釈)を行い、最終的な決定(判決)をしなければなりません。これが判例の立場です。

 例えば、発明者(特許出願人)の陳述を聴取し、専門家証人の証言を聴いて、或る用語は明細書中で所定の意味に使用されていると解明されたとしても、例えば特許出願の審査中の補正や意見書の内容から、その所定の意味の通りにクレームを解釈することは公平に反し、禁反言の原則に反するという事情があるかもしれません。

 そうしたことを判断するのは、裁判官の役目です。
ファイルラッパーエストッペル(禁反言の原則)とは

(e)このようにクレームの解釈は複雑な作業ですので、審理の途中で浮かび上がったクレーム文言上の争点を成り行き任せで審理することは効率的ではありません。

 裁判官は、事前にクレームの文言に関して当事者間にどう言う意見の食い違いがあり、そのうちのどれが法律上の争点になるのか、当該争点に関して陪審に対してどう言う証拠を判断材料として提示するべきなのかを、事前によく検討しておく必要があります。

 そうした点から、マークマンクレーム解釈の手続が地方裁判所の各地区のローカルルーるとして定められています。

 ここでは、これらのルールのうちの一般的なものを説明します。


Aマークマン・クレーム解釈の手続の内容

(a)解釈されるべき用語リストの交換

 まず原告及び被告は、裁判所が理解するべきと考える用語のリストを交換します。

(b)予備的クレーム解釈の交換

 原告及び被告は、前述のリストにより特定された用語に関して、自らが提案するクレームの解釈を交換します。

 その際には、解釈の根拠となる内部証拠及び外部証拠を提出します。

 内部証拠とは、解釈の裏付けとなる明細書の記載や特許出願の審査の経過などです。
内部証拠(intrinsic evidence)とは

 外部証拠とは、有効特許出願日の技術水準を記載した書籍などです。

(c)ヒアリング前のクレーム解釈共同陳述書の提出

 原告及び被告は、予備的クレーム解釈の交換の後で、その解釈について歩み寄りが可能な用語をリストから外すために話し合いを行います。

 しかるのちに、原告及び被告は、解釈について争いのあるクレーム用語、当該用語に関するそれぞれの解釈、その解釈の裏付けとなる内部証拠及び外部証拠を裁判所に対して特定します。

(d)クレーム解釈のディスカバリー

 原告及び被告は、クレーム解釈に関する証拠のディスカバリーを行います。

 例えば相手方の専門家証人に対してデポジションを行います。
デポジション(Deposition)とは

(e)マークマン・ブリーフ

 原告及び被告は、それぞれマークマン冒頭陳述書、及び、クレーム解釈をサポートする証拠を提出します。

 その後原告及び被告は、マークマン返答陳述書、及び、専門家による返答宣誓書等の証拠を提出します。

(f)マークマン・ヒアリング

 裁判所は、必要に応じて、クレームの解釈に関してヒアリングを行います。



留意点

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