体系 |
外国の特許法・特許制度 |
用語 |
Interpretation of the written contract(契約書の解釈) |
意味 |
“Interpretation of the written
contract”とは、契約書を内容を解釈することを言います。
“Interpretation”という用語は、“construction”と同様に一般に“解釈”と呼ばれます。この物事の意味を説明すること(解説)を言います。
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内容 |
@Interpretation of the written contractの意義
(a)私人間の権利関係において重要な位置を占めるものとして契約があります。
(b)アメリカ合衆国では、(特許出願により)“発明の全部を開示することの見返りとして、他人が特許発明について使用・譲渡の申出・販売・輸入を行うことを禁ずる権利”、すなわち、特許権が与えられます。
そして、この権利に基づいて、例えば他人との間にライセンス契約を締結したり、あるいは当該権利自体を譲渡する契約を行うことができます。
(c)契約を締結する際には、一般に、当事者双方の合意した事柄を記載した契約書が作成されます。
合意の成立を確実とするとともに、合意内容に関して後日争いを避けるためです。
特に欧米法では、契約締結に至る迄の事前交渉における口約束などを、証拠として法廷に持ち込むことを禁止するパロールエビデンスルール(口頭証拠排除原則)があります。
→パロールエビデンスルール(口頭証拠排除原則)とは
従って、契約締結の前提となる合意事項に関しては、契約書にしておかないと、合意があったことすら、証明できないということになります。
(d)他方、契約書に明記された合意事項に関しても、その解釈(interpretation)を巡って疑義を生ずる可能性があります。
こうした解釈上の争いが原因で裁判事になった場合に、法律は、契約書の解釈のルールを知っている当事者の側に有利に働きます。
ここでは、こうしたルールに関して解説します。
AInterpretation of the
written contractの意義
(a)interpretation の原則
(イ)plean
meaning rule
・法律上の“interpretation”は、書類を文言通りに読み込むことを基本とします。
例えば契約書に使用されている文言は、特に不明瞭であるなどの事情がない限り、一般的な定義に従って、平易な意味に理解するべきです。
そうしなければ、一方の当事者が後述の目的論的解釈などを濫用したときに、いくらでも恣意的な解釈ができてしまうからです。
用語に関して特別な意味を持たせたければ、予め契約書にそのように書いておきなさい、というのが裁判所の立場です。
・例えば、特許(特許出願を含む)の譲り戻し(reassignment)特約付きの譲渡契約の中で譲渡し人甲と譲り受け人乙との間で前記譲渡の見返りとして或る合意(乙が甲から特許発明の実施に使用する備品を購入するなど)を行い、そして“合意が終了したときには前記特許及び特許出願を譲り戻す”と定めたとします。
この場合に、“合意の終了”という用語は、契約期間の満了やいずれかの当事者からの契約の破棄が該当すると考えられます。
当事者の一方(乙)からの契約の破棄は該当するが、当事者の他方(甲)からの契約の破棄は該当しないというような恣意的な解釈は、plean
meaning ruleに適合しません。 →plean meaning ruleとは
(ロ)フォー・コーナーズ・ルール
・このルールは、plean meaning
ruleから派生する約束事であり、文書の文言が不明瞭でない限り、文書の解釈は、外部証拠(この場合には、文書の四隅の外にある証拠)に依拠せずに、その文書に記載した条件から定めるべきであるというルールです。
→フォー・コーナーズ・ルールとは
例えば前述の特許及び特許出願の譲り戻しの例であれば、
“この譲り戻しの条項の意図は、備品の買い手である乙から契約を破棄した場合に、立場の弱い甲を保護するためであるから、甲からの契約破棄は該当しない。”(目的論的解釈)という主張を裏付けるために、
契約締結に至る交渉の過程でそういう口約束があった旨の交渉人の証言や、交渉の過程で作成されたメモで証明しようとしたとします。
実際にこのような主張をしたけれども、認められなかったという事例があります。 →SMS DEMAG 事件(565 F.3d
365)
裁判官の立場としては、“だからそういう主張をしたいのであれば、最初からその条件を契約書に書いておきなさいよ。”ということになります。
(ハ)Golden rule(黄金律)
このルールも、plean meaning
ruleに関連する約束事であり、契約書中の或る条項の文言を解釈する際には、他の条項と矛盾するようなことがない限り、通常の文言通りに解釈するというものです。
→Golden rule(黄金律)とは
(b)interpretation の態様
(イ)Literal
Interpretation(文理解釈)
これは、契約書に記載された文言を文理に忠実に解釈する方法です。
(ロ)Purposeve Interpretation(目的論的解釈)
これは、契約書を文言通りに解釈する場合に不合理なことになる場合に、契約に至った実質的な意図を考慮する解釈法です。
例えば、甲が発明の実施である事業を関連する甲の全ての特許とともに乙に対して移転する旨の契約をする場合に、前述の
“特許”には、特許出願が含まれると解釈する如くです。
前記事業が移転された後に、契約対象から外れた甲の特許出願に対して特許が付与されると、乙の事業展開に支障を生ずる可能性があるからです。
しかしながら、この種の解釈は、あくまで例外的な救済であり、必ずしも救済されるとは限らない点に注意するべきです。
・契約書に“特許には特許出願を含む”と書いておく、
・分かる範囲で特許番号及び特許出願番号を契約書に記載しておく、
・特許出願の準備中の案件があるのであれば、その取り扱いを定めて契約書に盛り込む、
など、
さまざまな局面を想定して契約の中身を契約書に明記しておくことが基本です。
(ハ)Contextual
Interpretation(文脈解釈)
・これは、契約の目的や用語の使用状況などを考慮して、文脈上の解釈をする手法です。
・例えば特許出願中に他人にライセンス契約をする場合に、特許出願人(ライセンサー)がライセンシーの同意を得ずに特許出願の取下げなどをせずに特許の取得に努力する義務(特許出願手続の業務遂行義務)が課される場合があります。
こうした場合に、“特許出願の取下げ”を文言通りに厳格に解釈するべきでないという場面で文脈解釈が行われる場合があります。
例えば日本のライセンス契約の事例ですが、出願審査請求の期限を失念した特許出願人が出願審査請求を期限内にしなかったのは特許出願手続の業務遂行義務違反に当たらないと主張し、裁判官がこの主張を退けた事例があります。
→特許出願手続の遂行義務のケーススタディ
所定期間に出願審査請求をしなければ特許出願を取下げたものと見做され、法律効果上、自発的に特許出願を取下げたことと変わりがないからです。
米国特許法では、出願審査請求の制度はないですが、特許査定が出たのに特許料を納付しなかったり、特許出願に対するアクション(拒絶理由通知)を放置したりすれば、同様に解釈されるものと考えられます。
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留意点 |
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