パテントに関する専門用語
  

 No: 231   

進歩性審査基準(特許出願の要件)/効果

 
体系 実体法
用語

引用発明と比較した有利な効果

意味  引用発明と比較した有利な効果は、特許出願の請求項に係る発明の進歩性を肯定的に評価する材料となります。

内容 ①技術思想である発明において、課題は発明の出発点であり、課題の解決手段は発明の本体(発明の構成)であり、そして発明の効果は、発明の結果です。

②進歩性の審査基準において、特許出願に係る発明の出発点に関する観点(課題の共通性)、発明の本体に関する観点(技術分野の共通性、作用・機能の共通性、引用発明の内容中の示唆)は重要な判断要素とされていますが、発明の効果は文言上、同列には扱われていません。一般に、
発明の課題(目的)に意識する
   ↓
目的達成の達成するために、所定の課題解決手段(発明の構成)を採用する
   ↓
発明の構成が所定の作用・機能を奏する
   ↓
作用機能の結果として発明の効果が実現する
という関係があり、発明の進歩性の審査対象である請求項の発明の重要な効果を引用発明が奏しないような場合には、課題の相違や、作用・機能の相違として進歩性を肯定できることが通常だからです。

③このため、進歩性審査基準では、発明の効果は参酌要素であるに留まります。すなわち、「請求項の発明が引用発明と比較した有利な効果を有している場合には、これを参酌して、請求項に係る発明に想到できたことの論理付けを試みる。」ことになります。

 例えば発明の対象が従来品に比較して若干優れた特性を有していても、当業者が容易にすることができる選択に従い、従来品の構成の一部を他のものに置換する結果としてもたらされる効果である場合には、進歩性の判断を左右しません(昭和37(行ケ)199号)。

④しかしながら、引用発明と比較した有利な効果が、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであるときには、進歩性が否定されないことがあります(昭和44年(行ケ)107号)。

留意点 ④に関して、特許出願人は、進歩性を肯定するために顕著な効果が要求されるのは、一応の論理付けができた場合であることに留意する必要があります。新米の審査官の場合には、拒絶理由通知において、いわゆる事後分析(ハインドサイト)的な論理付けをして、顕著な効果がないことを盾に進歩性を否定することがあります。そういうときには論理付けが雑になっていないか(例えば徒に設計的事項と極め付けたり、特許出願の出願内容から得た知見を足掛かりとしていないか)を注意する必要があります。
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