体系 |
実体法 |
用語 |
非特徴的事項との組み合わせの問題点(同一技術分野論) |
意味 |
同一技術分野同士の引用例を組み合わせることは阻害要因がない限り容易であると解釈する同一技術分野論は、技術分野や開示内容次第で合理的でない場合があります。
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内容 |
同一技術分野論とは、特許出願に係る発明Aと最も近い発明A’(主引用例)を同一技術分野で探して一致点と相違点αとを認定し、次に相違点αを開示する副引用例を同一技術分野から探し出し、探すことができたら、2つの引用例を組み合わせる阻害要因がない限り、進歩性がないと認定するというものです。
A阻害要因というのは、主引用例に副引用例を適用すること(改変)が主引用例の目的に反すること、上記改変が引用例の発明の思想と正反対の性質のものであること、上記改変により本質的な不具合が生ずることなどです。
Bしかし引用例同士が同じ技術分野でありかつ阻害要因がなくても、組み合わせが容易でない場合があることに特許出願人は留意するべきです。
C例えば相違点αが引用例の特徴的事項でない場合です。例えば化学分野の発明の特許出願は非常に多数の実施例を含んでいる場合があります。先行する特許出願Aの明細書に記載された多数の実施例の一つにαが記載されている場合に、問題意識を持たないと改めて副引例にαがあることを探し当てることは難しいことがよくあります。→平成20年(行ケ)第10096号回路用接続部材事件
Dこれに対して審査対象である本件特許出願Bが行われた後、事後的に、特許出願Aの開示事項αを探し出すのはそれほど難しいことではありません。審査官や調査官は先に特許出願Bの明細書の内容を知っており、創作の目的地が判っているからです。特許出願Bから知り得た情報(いわゆる後知恵)をフル活用して、αの作用・機能などの情報を手掛かりに特許分類検索などにより必要な技術文献を見つけることができます。→特許情報プラットフォームのパテントマップガイダンス参照
D同一技術分野論は、ハインドサイトにつながり易い危険性を含んでいます。こうしたハインドサイトを排除するため、上述の判例では、“発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにした筈であるという示唆等が存在することが必要である”旨が述べられています。
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留意点 |
Dの考え方は、欧州特許出願の審査基準の”could-would アプローチ”につながるものです。
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