体系 |
実体法 |
用語 |
could- would アプローチ |
意味 |
could- would アプローチは、欧州特許出願の進歩性判断の手法である課題解決アプローチの一つであり、当業者が先行技術の教示を考慮したであろうか否かで判断するものです。
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内容 |
@欧州特許出願の進歩性の判断基準では、解決すべき技術的課題に直面した当事者にとって、最も近い先行技術(主引用例)に変更又は付加を行って、本件特許出願のクレームの構成に想到できるための教示(teaching)が他の先行技術(副引用例)を含めた先行技術の全体にあるかどうかが判断されます(→課題解決アプローチ)。
Aその際に、当業者が先行技術の教示を、或る面から見て、「考慮できた(could)」であろうというのではなく、当業者がその教示を「考慮したであろう(would)」と言えるか否かで判断されます。
B欧州特許出願の進歩性判断においてcould- would
アプローチが採用されている理由は、特許出願の出願時を進歩性の基準としないで、特許出願が行われた後になって、特許出願の出願書類から得た知識を持って先行技術に開示された構成要件を集めて進歩性なしと判断すること(ハインドサイト、或いは後知恵)を回避するためです。
C例えば特許出願のクレームの発明と主引用例の相違点αが、副引用例である別の特許出願の明細書中の非常に多数の実施例の一つに開示されていた場合に、主引用例と副引用例とが同一技術分野のものであるから当業者が相違点αの開示を主引用例に適用することを考慮できる(could)筈だと推論することは可能です。しかしながら、実際には改めて問題意識がないと開示内容を主引用例に適用することを考慮したであろう(would)とは言えないことが多いのです。
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留意点 |
日本の進歩性審査基準では、“進歩性の基本的な考え方”として、特許出願時の技術水準を的確に考慮した上で当業者であればどのようにするのかを常に考慮するとしています。“どのようにするのか”の解釈として、“引用発明を適用できた筈だ”と考えるのか、“引用発明を適用しただろう”と考えるのとでは判断のレベルが異なってきます。日本でも後者の立場をとる判例があり、注目を集めています(平20(行ケ)10096号)
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