体系 |
実体法 |
用語 |
阻害要因とならない場合のケーススタディ1(進歩性) |
意味 |
引用文献の組み合わせに阻害要因があるかどうかは、本願発明の属する技術における特許出願時の技術分野を的確に判断した上で、当業者であればどうするのかを常に考慮して、判断するべきであります(進歩性審査基準)。
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内容 |
@進歩性のケーススタディとして、技術的な不都合が阻害要因とならない場合を考えます。
A物品の自動選別を行うための技術として、物品載せ体を多数取り付けた搬送ラインを設け、この搬送ラインの複数箇所で一定の仕分け条件に従って物品を側方へ送り出す手段を備えたもの(構成A)があります。果物や野菜(以下「果菜」という)の分野では、従来、物品載せ体が一方へ傾いて果菜が転動するようにしていましたが、発明者は、物品載せ体に搬送ラインの進行方向に動く搬送ベルトを設け(構成B)、搬送ベルトに載せた果菜を側方へ送り出すというアイディアを考え出しました。
B先行技術として、果菜の自動選別の技術分野で構成Aを有する主引用例が、また薄物等の小物類の自動選別の分野で構成Bを開示する副引用例が発見されたものとします。但し、副引用例に開示された物品載せ体は、物品載せ面の中央が浅く窪んでいました。発明者は、副引用例の物品載せ体の構成は、薄物などを載せる限りは問題ないが、果菜を載せると中央が窪んだ形状から、転がってしまい傷物になるから、これらの引用例を組み合わせることに阻害要因があると考えました。こうした不具合は裁判所で阻害要因と認められるでしょうか。
C裁判例(平成26年(行ケ)10071号)では、上記不具合は阻害要因と認められませんでした。その主な理由は、もともと果菜載せ体を傾けて側方へ送る技術があったのだから、果菜が転がることで傷がつくことは当業者が引用例同士の結び付きに想到することを妨げるほどの事情とはならない、また不都合を回避する工夫をすることも周知の技術であるということです。
D当業者であればどうするのかを常に考慮すること、特許出願時の技術水準を的確に把握することは、進歩性の基本的な考え方ですが(進歩性審査基準)、それは阻害要因の判断でも同じことであります。自分個人の感覚として阻害要因と見えることであっても、特許出願時の技術水準を示す技術文献を精査し、当業者の視点に立って考えると、阻害事由とは言えないという場合があるのです。
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留意点 |
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