パテントに関する専門用語
  

 No: 376   

進歩性審査基準(特許出願の要件)/発明の作用

 
体系 実体法
用語

発明の作用

意味  発明の作用とは、発明の構成を行う働きをいい、特許出願の請求項に記載された事項を理解する上で重要な事柄です。


内容 @発明の作用は、発明の構成と発明の効果とをつなぐリンクとしての役割を有します。

 例えば、医療用コルセットを透光材料で形成することで患部を外部から透視できるようにするというアイディアAと、医療用コルセットを透光材料で形成することで患部に紫外線が当たるようにして殺菌作用を持たせるというアイディアBがあったとします。発明の目的・構成・効果を比較すると次のようになります。

{発明の構成の対比}

Aの発明の構成…可視光を透過する材料で医療用コルセットを形成すること。

Bの発明の構成…紫外線を透過する材料で医療用コルセットを形成すること。

{発明の作用の対比}

Aの発明の作用…可視光を透過すること。

Bの発明の作用…紫外線を透過すること。

{発明の効果の対比}

Aの発明の効果…コルセットを透過する可視光を視認して患部を観察できること。

Bの発明の効果…患部に照射した紫外線により殺菌すること。

A上述の医療コルセットの例の場合には、作用の共通性(光を透過すること)があるため、例えば発明Aが出願発明、発明Bが引用発明である場合に、進歩性が否定される可能性が高いと考えられます。

B“発明の作用”は“発明の構成”及び“発明の効果”との中間に位置して靭帯的役割を果たすものですが、発明の効果との差異は必ずしも明確ではなく、両者をあわせて“発明の作用・効果”という場合があります。また、逆に発明の構成と作用との間に密接な関係があって、物の発明を特定するのに、発明の特定事項の一部を“作用的表現”で表現した方が発明の本質を捉え易い場合があります。

Cまた「作用」という用語は、“発明の作用”という使い方の他に、“発明特定事項の作用”という使い方をされる場合もあります。

(イ)進歩性審査基準には、「(特許出願の)請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項との間で、作用、機能が共通することや、引用発明特定事項どうしの作用、機能が共通することは、当業者が引用発明を適用したり結び付けたりして請求項に係る発明に導かれたことの有力な根拠となる。」と記載されています。

(ロ)“発明の作用”に着眼するのか、“発明特定事項の作用”に着眼するのかによって、審判部の判断が裁判所で覆った事例として、平成8年(行ケ)262号があります。

 これは、印刷装置のシリンダを洗浄するための布帛をシリンダ面へ接触・離反させる手段として、引用例2のカム機構に代えて引用例1の膨張部材を用いることは容易である否かが争われた事例です。

{審判部の判断}

引用例1は膨張部材で凹版シリンダ上の水分及び過剰のインクを取り除くもの、引用例2はカム機構で印刷時に集積された付着物を取り除くための装置であり、取り除くのは印刷中に生じた様々な付着物を取り除くものだから、移動される布帛の対象及び作用が異なる。

{裁判所の判断}

印刷装置のシリンダの洗浄を布帛を押圧して行うものである点で共通し、甲第1号証のカム機構も甲第2号証の膨張部材も、布帛をシリンダに接触・離反移動させる作用のために設けられているものである点で異なるところはない。

D上述の“発明特定事項の作用”の他に“発明特定事項の機能”という用語が出てきます。前者はより客観的で広範な概念であり、後者は“発明の効果”に近いものです(∵機能は物の働きのうち有用なものであるから)。また進歩性審査基準には、“発明の機能”という用語も使われています。


留意点 参考図53
発明のスタイル

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