パテントに関する専門用語
  

 No:  380   

進歩性審査基準/特許出願の要件(外国)/非自明性

 
体系 実体法
用語

非自明性(Non Obviousness)

意味  非自明性(Non Obviousness)とは、米国特許出願の発明の特許要件の一つで我国における進歩性に対応するものです。


内容 @米国特許法第103条には次のように規定されています。

(イ)特許が求められている発明の主題と先行技術との差異が特許出願の時点で当該主題の関係する技術分野(the art to which the subject matter pertains)で通常のスキルを有する者(当業者)にとってその主題全体として(subject matter as a whole)自明なものである場合には、たとえその発明が102条(新規性の規定)に該当しなくても特許を受けることができない。
analogous artとは

(ロ)特許性は発明がなされた態様(the manner in which the invention was made)により否定されることはない。

A要するに先行技術と比較して新規でなくても当業者にとって自明のことであれば特許を受けることができないということです。

B我国の特許法第29条第2項とほぼ同趣旨ですが、同項が「容易に発明できた」かどうかを問題とするのに対して、米国特許法のそれは「自明」性があるかどうかを問題としています。

C“発明の主題全体として”という文言は、いわゆる後知恵(ハインドサイト)を回避するための進歩性判断の一つのキーワードです。 例えば”多孔質の製造プロセス”事件(731 F.2d 1540)では発明者はある種の素材(PTFE)に関して、従来の常識と異なる未知の特性を発見してそれを多孔質の製造プロセスに応用しました。高結晶性の素材を低温で高速延伸すると破壊されずに高い強度の製品ができることに気付いたのです。ところが訴訟において素材を高結晶とすることは文献Aに、低温で延伸することは文献Bに、高速延伸することは文献Cに記載されているから当該発明の主題は当業者にとって自明であるという論法で進歩性が否定されようとしたのです。しかし発明の主題全体に着目して発明の価値を評価すれば、それが自明であるということはあり得ないことであります。→As a whole とは(進歩性)とは

D発明がなされた態様により特許性を否定されないというのは、要するに発明というものは天才のひらめき(Flash of Genius)に成立するものである必要はないということです。例えば発明特定事項の一つを選択するときに、一定の作用を発揮する材料を多数の候補の中から実験を通じて試行錯誤により選び出すことがあるからです。この文言は、進歩性の理論が構築する過程で、一つの裁判例(Cuno Engineering v. Automatic Devices)によりFlash of Genius Testが導入され、後の裁判でこれが否定されるという時期があったのです。

Eなお、組成物を利用若しくは生成するバイオテクノロジー上の方法の非自明性に関して特例があります。

Fまた審査官が特許出願人に対して拒絶理由通知を送付するときには、当該出願の請求項に係る発明について一応の自明性を証明する必要があります(→Prima-facie Obviousness)。

Gクレームの全ての要素が明確或いは固有的に一つの先行技術内に見出される場合には、自明性(進歩性がないこと)の問題でなく予期性(新規性がないこと)の問題となります。
予期性(Anticipation)とは


留意点 Bに関して、「容易に発明できた」という文言は表現上曖昧であり、必ずしも“Yes”又は“No”で割り切れないので、かつては発明できたと疑わしい場合には特許をするべきかどうかということが学説上論じられたこともあります。しかしながら、“疑わしい場合”を想定して予め特許をする、しないと決めること自体が望ましいことではありません。
日本の進歩性審査基準によれば、論理付けの可否により進歩性を判断しています。

“進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、引用発明に基づいて当業者が発明に容易に想到し得たことの論理付けができるか否かにより行う。”

 そして容易に想到し得たかどうかは、発明に至ることの困難性の程度の問題ではなく、発明をすることの契機があるかどうかで判断するということが裁判上有力となっています。


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