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①進歩性審査基準によれば、用途発明は、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明をいいます。
②例えば周知の食品に痩身効果という未知の属性が発見されたとしても、食品の用途の範囲で用いられる限り、用途発明とはなりません。その属性が未だ知られていなかったとはいえ、その食品を食する度に痩身作用を発揮していた筈であり、属性を発見した者(特許出願人)は、社会に対して新たな有用な技術を提供していないからです。
③これに対して、進歩性審査基準によれば、従来、“電着下塗り”という用途に使用されていた物質Aについて、“船舶防汚用”という新たな用途が発見されたときには、用途発明として成立し得るとしています。
④もっとも、物の新しい性質,機能を発見し,これを本来想定していた用途と異なる用途に利用する発明を特許出願した場合、用途発明として評価を受けるとしても、引用発明から用途が容易想到であると判断されると、進歩性を否定される可能性があります。進歩性審査基準で引用する平成14年(行ケ)第376号に次のように述べられています。
(イ)特定の発明に係る物の新しい性質,機能を発見し,これを本来想定していた用途と異なる用途に利用することが,用途発明として上記物の発明とは別異の発明としての評価を受けることはあり得ることである。しかしながら,特定の発明に係る物が有する本来の性質,機能と異なる性質,機能を利用するといっても,その性質,機能が従来の公知技術から当業者において容易に想到できるものである場合や,それらが周知事項に属するものである場合には,少なくとも,その用途に係る発明に進歩性を認めることはできないというべきである。
(ロ)(本願発明の場合)本件刊行物発明に係る消波構造物を汀線に平行に設置し,これを養浜の用途に使用するとした点は,本件刊行物発明に周知事項を適用して当業者が容易に想到できることというべきである
⑤ここで本願発明は、消波構造物を設置して養浜(浜辺が波によって削られないようにする技術)に利用するものです。消波構造物の構成自体には刊行物に記載されていましたが、養浜に用いるという用途までは記載されていませんでした。しかし裁判所は用途を含めて刊行物から容易想到であるとしました。
⑥すなわち、用途は用途発明の構成の一部なのだから、“物の構造+用途”という請求項の場合には、物の構造の容易想到性、物の用途の容易想到性がそれぞれ考慮され、全体として容易に想到し得るときには進歩性が否定されるということになるのです。
⑦用途発明における物の属性には、その物から直接把握できるものと、そうでないものとがあります。 →用途発明における物の属性の種類
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