体系 |
実体法 |
用語 |
common sense |
意味 |
Common sense(常識)は、米国特許出願の非自明性(進歩性)の判断の実務において、発明の構成に至ることを促す要因があるかどうかや、先行技術の範囲を判断するときに着目される概念です。
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内容 |
①TSMテストを補う形での“common sense”の参酌
(イ)米国特許出願の実務ではハインドサイト(後知恵)による拒絶を避けるということが大きなテーマになっており、そのための審査ツールとして先行技術中に教示・示唆・動機が存在するかをテストするTSMテストが実施されていました。しかしながら、TSMテストが余りに厳格に運用されることで弊害が目立つようになりました。
→例えばDembiczak判決を参照。
(ロ)MEPE(日本の進歩性審査基準に相当するもの)は、連邦最高裁判所のKSR判決を受けて、TSMテストは、特許出願を審査するにあたり、審査官が“common sense”を援用することを妨げるものではないとしています。
(ハ)MEPEは、“common sense”を持ちうるときには、特定の文献における特定のヒントや示唆を必要とせず、ただ決定的な一般化(conclusory generalizations)を避けるための合理的な説明があれば足りるとしています。
②“field of endeavor”テストでの“common sense”参酌
(イ)米国特許出願の実務では、非自明性(進歩性)の拒絶理由の根拠となる先行技術は、同一の“field of endeavor”の範囲又は発明者が直面している問題と合理的に関連している技術から選ばなければならないとされています。
(ロ)判例は、同一の“field of endeavor”の範囲かどうかをテストする際には、特許出願の状況(circumstances)及び常識(common sense)を考慮すべきである、と述べています(→381 F.3d1320 In re Bigio)
(ハ)特許出願の状況とは、特許出願の明細書及びクレームにおいて発明の主題を如何に説明しているかであり、特許出願に係る発明の構造及び機能も含まれます。
(ニ)常識とは、発明者が直面している問題を解決する手段を探すであろう技術分野を決定するときに発揮される常識です(In re Oetiker 977 F.2d 1443)。
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留意点 |
(A)日本の進歩性審査基準では、特許出願の発明の構成に容易に想到できることの論理付けとして、技術常識を用いるとしています(→技術常識とは)。
「論理づけに最も適した一の引用発明を選び、…(発明特定事項の)一致点・相違点を明らかにした上で、この引用発明や他の引用発明(周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。」
(B)また技術常識は新規性の判断にも用いられます。
「『記載されているに等しい事項』とは、記載されている事項から本願出願時における技術常識(注)を参酌することにより導き出せるものをいう。
(C)なお、新規性・進歩性審査基準によれば、「技術常識とは、当業者に一般的に知られている技術(周知技術、慣用技術を含む)又は経験則から明らかな事項をいう。」とされています。
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