パテントに関する専門用語
  

 No:  464   

特許出願の種類/国内優先権(期間の延長禁止)

 
体系 特許出願の種類
用語

優先期間の延長禁止(国内優先権)

意味  優先期間の延長禁止とは、優先権の累積的主張により優先期間が実質的に防止されることをいいます。本来はパリ条約上の概念ですが、ここでは特許出願に国内優先権を主張する場合について説明します。


内容 ①特許出願人は、国内優先権を主張することで、先の特許出願の出願内容を、その同一性を維持しつつ、後の特許出願へ乗り換えることができます。しかしながら、国内優先権の主張の基礎となった特許出願が既に優先権(パリ条約優先権又は国内優先権)を主張しているときには、優先権の利益を制限することにしています。

②具体的には、甲がパリ条約の同盟国であるA国に対して開示事項1について特許出願1を行い、そしてパリ条約優先期間(出願日から1年)以内に我国への特許出願2(開示事項1+開示事項2)をし、さらに国内優先期間(出願日から1年)以内に特許出願3(開示事項1+開示事項2+開示事項3)を行ったとします。なんら制限をしないと、特許出願1から最大2年間の優先期間が認められることになります。

③しかしながら、本来優先権は、優先期間中の他人の特許出願などの様々な出来事に眼を瞑って最初の特許出願をした者を有利に遇するパリ条約上の特別の利益ですので、優先期間は延長してはならないというのがパリ条約の立場であり、その考え方は国内優先権制度にも受け継がれています。

(イ)優先期間の延長防止のために、パリ条約では「最初の」特許出願(又は実用新案登録出願)に優先権の発生を認めるのに対して、国内優先権では、先の特許出願の開示事項のうち別の優先権の主張の対象となっている部分については、優先権の主張を認めないという立場をとります。

(ロ)すなわち、下図の例では、特許出願2では、開示事項1に関して新規性・進歩性の基準時は特許出願1の出願時となり、開示事項2に関しては新規性・進歩性の基準時は特許出願2の出願時となります。これに対して、特許出願3では、開示事項2に関しては上述の基準時は特許出願1の出願時となるのに対して、開示事項1及び開示事項3に関しては特許出願3のときとなるのです。

(ハ)こうした相違は、パリ条約優先権は、異なる国の特許出願同士の関係であるのに対して、国内優先権は、同じ国の特許出願同士の関係であるという点にあると考えられます。

 すなわち、同じ国内では一つの着想の一部に取り敢えず特許出願をしておき、後で着想全体について特許出願をするということがあるので(→国内優先権と実施例の補充)、「最初の」特許出願(又は実用新案登録出願)でなければ優先権を認めない、というのは無理があるのです。

④上記の③(ハ)のような事態を回避するためには、最初の特許出願1の日から一年以内に特許出願1及び特許出願2に基づいて優先権を主張して特許出願3を行うしかありません(→複数優先(国内優先権))。そうすると、結局、1年の優先期間内に全ての優先権の主張を終えることになるのです。

⑤こうした取扱いは、特許出願1に基づく優先権がパリ条約優先権である場合だけでなく、次のものである場合にも適用があります。

(イ)パリ条約の例による優先権

(ロ)国内優先権


留意点


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