パテントに関する専門用語
  

 No:  503   

進歩性/特許出願の要件(外国)/2次的考察・留意事項
/進歩性審査基準

 
体系 実体法
用語

2次的考察の留意事項

意味  米国特許出願の進歩性(非自明性)を判断する実務でのいわゆる2次的考察に関して留意するべき事項を解説します。


内容 ①米国特許出願の進歩性(非自明性)を判断する実務では、3つの基本的な手順(先行技術の範囲及び内容の決定、先行技術とクレームとの差異の明確化、当業者のレベルの確定)の次に、通常のTSMテスト(先行技術の教示・示唆・動機付けの有無)を行い、通常の技術的観点(発明者の試みの範囲、発明の課題など)について審査されます。

②しかしながら、そうした定型的なテストだけでは、発明の本質を見落とす可能性があります。そうした観点からいわゆるグラハム判決では、2次的考察に関して次のように言及しています。

“Such secondary considerations as commercial success, long felt but unsolved needs, failure of others, etc., might be utilized to give light to the circumstances surrounding the origin of the subject matter sought to be patented.”

(商業的成功、長年要望されかつ未解決であったニーズ、他人の失敗などの2次的考察は、特許が求められていた主題の根本(origin)を取り巻く周囲の状況に光をあてるために利用してよい。)

③留意事項1

(イ)2次的な考察は、特許出願の明細書や引用文献に記載された技術的事項以外の諸事情に関しても光を当てるという働きをするものです。

(ロ)しかしながら、あくまで発明は技術的な創作に関するアイディアなのですから、それを通じて技術的な効果や技術的な意味を明らかにできる場合に限ります。

(ハ)例えば「梳綿機」事件(249 F. Supp.823)では、ウールなどの隣接分野で公知であった異物破砕技術をファインコットン(精綿)の分野の発明に適用することの困難性に関して、長期間望まれていながら不実施だったことを2次的考察して、進歩性ありと判断した事例です。

(ニ)一見すると、毛の原料が動物由来の物(ウール)だろうと植物由来のもの(コットン)だろうと異物が混じるのに相違はなく、技術の転用は容易であっただろうという気がします。

(ホ)しかしながら、裁判所は不実施だった理由を証拠を通じて丁寧に調べ、特許出願時の技術水準から上記技術をファインコットンの分野に適用することが当時の当業者の常識から外れたものであったと結論しました。

(ヘ)日本の進歩性審査基準には“進歩性の基本的な考え方”では、“特許出願時の技術水準を的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して”判断するべき旨を述べています。

(ト)2次的考察は、“特許出願時の技術的水準を的確に把握するための手法のひとつ”であると考えられます。

(チ)従って、単に価格が安いので商品の売れ行きがよかったという如きは、2次的考察を行う価値がないのです。

④留意事項2

 2次的考察から生じた証拠は、それが存在するときには、特許の非自明性の決定において常に考慮しなければならず、それを考慮しないのは誤りである(713 F.2e 1530)

(Evidence rising out of “secondary considerations” must always when present be considered en route to a determination of obviousness of a patent, and it is error to exclude that evidence from consideration.)

(イ)グラハム判決は“2次的考察は…に光を当てるために利用してよい(might be utilized)”と述べているので、裁判官の裁量で2次的考察をすればよいのかという疑問が生じます。

(ロ)そうではないと述べたのが上述の控訴審の判断です。

(ハ)原審の裁判官は、2次的な考察は、きわどいケース(close case)において判断すれば足りると考えていたようですが、その考え方は控訴審で否決されました。
2次的考察とは


留意点  日本の進歩性審査基準は、2次的考察に関してまとまった言及をしていませんが、商業的成功に関しては、次のように述べています。これは上述の留意事項1と重なるものです。

“商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができる。ただし、出願人の主張・立証により、この事実が請求項に係る発明の特徴に基づくものであり、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものでないとの心証が得られた場合に限る。”


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