体系 |
実体法 |
用語 |
Nexus(関係性)とは〔商業的成功〕 |
意味 |
Nexusとは、異なる事柄を関係付けるもの・連鎖という意味です。
特に専門的な用語ではなく、例えば英文法での名刺と動詞とを結びつける文法要素(sb to
doの如く)などにも使用されますが、ここでは特許出願の進歩性(非自明性)や商業的成功に関する用例に関して説明します。
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内容 |
@一見して先行技術との相違が微差であっても、発明品の売れ行きが市場で圧倒的である(商業的成功)などと特許出願人が主張した場合に、進歩性が認められることがあります。
A特許出願の実体審査は、純粋に技術的な観点の考察(先行技術の範囲及び内容の決定、先行技術と請求項の発明との差異を明確にすること、当業者のレベルの確定明らかにすること)からスタートします。
しかしながら、純粋な技術的観点からだけ審査対象(発明)光を当てると、影になった部分を正当に評価できない場合があります。何故なら発明は最終的に産業活動として実施されるものなので、産業界での評判に耳を傾けなければ、先行技術との相違の意味を的確に認識できない場合があるからです。これら主たる観点の考察とは別個の事項の考察を“2次的考察”といい、その一つとしてCommercial success(商業的成功)があります。 →commercial successとは
B当然ながら商業的成功は、技術的観点とは無関係な事情、例えば安売りなどの販売戦略に起因する場合があります。発明の技術的効果として従来よりも廉価に製造できるような場合は別として、そうした事情は発明の技術的価値とは全く無関係です。
C優れた発明が必ずしも商業的成功には結びつかないことから判るように、商業的成功は、多くの要因(商品の技術力やブランド力・競業品の存在など)が絡み合っていることが通常です。
Dそのため、発明のメリットから商業的な成功に至ったという因果関係(causal
nexus)が確認できることが2次的考察において重要となります。
ENexus(関係性)が否定され得る場合として、例えばライバル会社が当該特許発明についてライセンスを受けており、一見するとライバル会社から技術的価値を評価されているように見えながら、
(a)実は無償のライセンスであって、お金を払ってまで実施したいと評価されていたとは限らない。
(b)複数の特許に対して一括してライセンスをしたに過ぎず、審査対象である特許発明が評価されたのかどうかは分からない、
という事例が考えられます。 →Commercial Success(商業的成功)のケーススタディ1〔Nexusの存在〕
F特許出願に複数の請求項が含まれている場合、要素A+Bからなる請求項1の構成の製品に対する市場の反応が冷ややかであり、要素A+B+Cからなる請求項2の製品の売れ行きが非常に好調だったときには、請求項2に関して商業的成功に因る非自明性が認められる可能性があります。
しかしながら、構成(A+B)と構成要件Cとの関係が薄く、かつ請求項2の製品に対して積極的な広告活動が行われていたような場合には、要素C+広告活動が商業的成功に寄与する面が大きく、要素A+B+Cの発明のメリットと商業的成功との間にnexusを認めるに足りないと判断されることがあります。
→Commercial Success(商業的成功)のケーススタディ2〔Nexusの存在〕
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留意点 |
日本の進歩性審査基準でも商業的成功が特許出願の進歩性を推認するのに役立つ事実として参酌する条件として、「この事実が請求項に係る発明の特徴に基づくものであり、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものでないとの心証」が得られるように特許出願人が主張・立証を行うことを要求しています。
上述のNexusの議論を参酌して発明の特徴と商業的成功との因果関係をきちんと明らかにすることが重要であると考えられます。
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