体系 |
実体法 |
用語 |
A person of ordinary skill in the art(当業者) |
意味 |
A person of ordinary skill in the artは、米国特許出願の実務において非自明性を判断する際にこの人を基準として発明が自明かどうかを判断する仮想的な人間です。
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内容 |
①A person of ordinary skill in the art(当業者)を定める意義
個人の庭に生えてきた樹木がその人の者である如く、個人の頭脳に宿った発明はその個人の所有すべきものであります。しかしながら、例えば従来金属で製造されていたドアノブを個人の職人芸を活かして陶器で製造したような物は、創作的な観点から見ると、単なる材料の変更という設計変更に過ぎず、自明であるため、発明として保護することはできません(→ホッチキス判決とは)。そうなると誰にとって自明なのかが問題になります。
②A person of ordinary skill in the artの意味
(a)上述の陶器製のドアノブの例では、“材料変更だから容易である”という理由で特許出願を拒絶するならば、ドアノブを金属で製造することを創作の作り手が知っていたという前提が必要になります。
(b)そこで米国特許出願用のMEPE(我国の進歩性審査基準に当たるもの)では、いわゆる当業者とは、発明を行うときに関連する技術の全てを知っていたと推定される仮想的な人物(The person of ordinary skill in the art is a hypothetical person who is presumed to have known the relevant art at the time of the invention.)としています。 →presumed to have known(知っていたと推定される)とは
(c)上述の陶器製のドアノブの例からも分かるように“skill”といっても職人の手技のようなものではなく、技術的な知識とそれを活かす経験が問題となります。
③A person of ordinary skill in the artのskillのレベルの設定はグラハムテストの一つとなっています。 →グラハムテストとは
④日本の進歩性審査基準は、当業者を次のように規定しています。
(a)本願発明の属する技術分野の出願時の技術常識を有し、
(b)研究、開発のための通常の技術的手段を用いることができ、
(c)材料の選択や設計変更などの通常の創作能力を発揮でき、
(d)かつ、本願発明の属する技術分野の特許出願時の技術水準にあるもの全てを自らの知識とすることができる者
上述の要件のうちの(d)は上記②の“presumed to have known”の影響を受けていると考えられます。
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留意点 |
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