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613
進歩性審査基準/特許出願の要件(外国)/機能的アプローチ・ケース1 |
体系 |
実体法 |
用語 |
機能的アプローチのケーススタディ1(肯定例) |
意味 |
ここでは米国特許出願の実務で関連技術の範囲の解釈への課題解決アプローチの適用に肯定的な事例な事例を説明します。
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内容 |
①事例1
[事件番号]
476 F.2d 1370 (In re Ellis)
[判決言い渡し日]
1973年4月26日
[主要論点]
第2引用例(泥落とし)が本件発明(床板用グレーチング)の類似技術であるかどうか。
[本件発明の内容]
グレーチングは、枠内に多数の平行なバーを等間隔に配置した構造であり、もともとは側溝などの蓋として使用されるものであるが、本件の特許出願人は、バーの間隔を従来よりも狭く(バーの幅と同程度)として、床版に使用できるようにした。
本件特許出願の発明によれば、通行人がその上を歩行することができ、かつ埃などはバーの隙間から下に落ちるという作用効果を有する。
[引用発明の内容]
靴をはいた人間が靴裏をこすり付けて、泥を落とせるようにしたもの。
[特許出願人の意見]
引用文献1は、米国特許分類によれば、道路及び舗装の分野に属するもの、他方、引用文献2は、ブラッシング・スクラビング(泥落とし)・一般的な清掃の分野に属するものである。従って当業者は、床に装置されるグリッド又はグレーティング構造の技術を、ブラッシング・スクラビング・一般的な清掃の分野に見出すことを期待しない。
[審判部の意見]
本件発明及び引用発明の分類が異なるという出願人の意見は間違っているし、床版用グレーチングに快適な歩行を許容する程度に十分なバーを用いることは周知の事実である。そうすることにより、例えば女性の靴の細いヒールがそこに引っ掛かることを防止できる。具体的な配置は、程度の問題であり、自明の変更に過ぎない。
[裁判所の判断]
引用例の適格性に関しては、米国特許分類も大切であるが、むしろ構造及び機能の類似性に基づいて、特許出願人(発明者)の直面する問題に合理的に関連するかどうかを判断するべきである。引用例1の通行人用のグレーチングと引用例2の泥落としとは、構造が近似しており、機能も重複しているので、両者が組み合わせ可能であるという審判部の判断は妥当であり、歩行用グレーチングで女性のヒールが引っ掛からないように、引用例1のワイヤー・ロッド・部材同士をより近づけることは、当業者にとって容易である。
[備考]
MEPE(日本の進歩性審査基準に相当するもの)で引用された事例
②事例2
[事件番号]
796 F2d
436 (In re Richard DEMINSKI)
[判決言い渡し日]
1986年7月8日
[主要論点]
引用例(ポンプのウォーター・ボックス)が本件発明(高圧ガストランスミッションコンプレッサー)の類似技術であるかどうか。
[本件発明の内容]
本件特許出願の高圧ガストランスミッションコンプレッサーは、ダブルアクション式であって、排気弁及び吸気弁が交換可能であるもの(請求項1)、或いは排気弁及び吸気弁を一つのユニットとして引き出すことができるもの(請求項17)である。
[裁判所の判断]
副引用例1のポンプのウォーター・ボックス及び副引用例2のポンプは、排気弁及び吸気弁の交換可能という同じ機能及び構成を有しているため、同じ発明者の試みの範囲にあり、当該特許出願と類似の技術と認められるので、主引用例に適用することができ、請求項1の進歩性は否定される。
他方、両弁をユニットとして引き出す機能及び構成は、いずれの先行技術にも開示されていないため、請求項17の進歩性は認められます。
③コメント
機能的アプローチを適用するときには、“機能”の概念を過剰に狭く解釈しないことが必要です(特に特許出願人の側に立つ場合)。この点に関してさらに事例を示します。
→機能的アプローチのケーススタディ2(肯定例)
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留意点 |
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