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①技術の進歩の意義
技術は人間の暮らしを豊かにするものであるので、より優れた技術を求めて改良発展を図るインセンティブが働きます。例えば、
真空管からトランジスターのように軽量・高機能な代替技術へ置き換えられたり、
構成要件の下位概念化により顕著な効果を発揮する選択発明(温血動物には無毒である殺虫剤など)が開発されたり、
既知の物の未知の特性を発見して未知の用途(例えばシワ防止用化粧剤)に用いる用途発明を考案したり、
というような新技術を開発して、社会に供給すれば、商業的に成功して大きな見返りが期待できます。
しかしながら、発明は無形のアイディアであり、多くの場合に同業者がその新技術を分析して真似ることは難しくありません。発明者は、新技術の開発に多くの時間や費用を使っていますから、単純にアイディアを盗用する事業者と価格競争をしたら勝負にならず、馬鹿を見るということになります。それでは新技術を開発しようとするインセンティブが大きく削がれることになります。
そこで特許出願人に新しい技術を開示させ、新規性や進歩性等を具備することを条件に、市場でその発明を一定期間独占させ(独占排他権)、産業の発達に貢献する。これが特許制度の仕組みです。
要するに、事業者に対して、法律の効果により、技術開発に関して、独占的利益というインセンティブを担保しようということです。
②技術の進歩の内容
(a)技術の進歩というと、科学史に残るような大変な創作でなければならないのか、という誤解を生じ易いですが、必ずしもそうではありません。
日常生活を少しだけ便利にするだけの工夫でも、先行技術との関係次第では十分に特許として通用するのです。
(b)例えば消しゴム付き鉛筆をいう物を始めて考案したとします。
単純に鉛筆及び消しゴムの組み合わせを持ち運びする場合と比較して、この消しゴム付きの鉛筆は次のような利点があります。
(イ)同時に使用される可能性の高い鉛筆及び消しゴムを対にして結合したので、一方を使っているときに他方が見当たらないという不便を回避できる。
(ロ)消しゴムを使うときに鉛筆を持って操作ができ、小さい消しゴムそのものを指で摘んで扱うよりも使い勝手がよい。
(c)特許出願の際に明細書にこうした利点を強調しておくことが奨励されます。
③外国での取り扱い
米国では憲法において科学の進歩及び有用な技術の促進のために特許を付与する旨が規定されています。 →有用な技術の促進(米国特許法)
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