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793 用途発明と機械類/進歩性審査基準/特許出願 |
体系 |
実体法 |
用語 |
用途発明と機械類について |
意味 |
用途発明とは、或る物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見い出すことに基づく発明をいいます(進歩性審査基準)が、こうした発明は、素材や化学の分野で主として成立します。機械類で用途発明が成立しにくい理由を考察します。。
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内容 |
①用途発明が機械類において成立しにくい理由
(a)用途発明は、例えば「成分Aを有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」のように主として素材や化学の分野の特許出願で特許が付与され(→用途発明のケーススタディ3(発明の機序))、機械類の発明の特許出願では特許査定に至ることはあまりありません。
(b)昭和58年(ネ)第1150号は、その理由を次のように説明しています。
「機械装置はすべて五感によつて認識しうる一面的な性質(属性)を有するに過ぎず、その属性の認識が直ちにその属性に着眼した各種用途への利用につながるため、一面的な既知の属性の認識と各種の利用対象とは密着しており、両者の間に創意的要素が入る余地がないからである」
(但し、この事案は用途発明の特許出願が権利になるか否かに関する事例ではありません)
②機械類の属性と用途発明との関係
一般に物の属性には、物が特定されるとその物自体から把握されるタイプと、その物がある環境(或る用途など)に置かれることで現れるタイプとがあります。当然ながら、後者の方が当業者にとって把握しにくく進歩性が認められ易いということになります。
そして機械類の属性は前者のことが多いのです。 →用途発明における物の属性の種類
③具体例
(a)仮想的事例として、誰かが紙製の鍋というものをはじめて考えて特許出願することができないのか、ということを考えたとします。燃えやすい紙で鍋を作るという点では発想のユニークさがあります。
(b)しかしながら、前述の通り、用途発明とは、“或る物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見い出すことに基づく発明”をいいます。
(c)紙製の鍋の発明で利用している属性とは、“濡れた状態の紙は燃えにくい。”ということです。“水で濡らした状態の可燃物は燃えにくい”ということは一般常識ですので、
前述の紙の属性が未知の属性とまで言えるかどうかは疑問です。
(d)改めて紙製の鍋を火にかけて燃えない理由を考えると、内部に入れた水が紙に浸透して蒸発するときの気化熱と、調理器具による加熱とが釣り合っているからであると思われます。
(e)そうすると、紙製の鍋の発明の成立条件として、紙が水を吸い込むスピードや保水量が関係してくる可能性があります。
(f)そうであるとすると、結局、紙を鍋に用いるという用途を限定しているものの、それ以外の構造的要素が重要であるということになり、結局普通の意味での用途発明ではなくなってしまうのです。
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