No: |
814 立証責任/特許出願/進歩性/特許侵害 |
体系 |
実体法 |
用語 |
立証責任の転換 |
意味 |
立証責任とは、裁判をするにあたって裁判官がある事実の有無について確信を持てないときに、その事実の有無を前提とする法律効果の発生又は不発生により当事者の一方が被る不利益のことをいうとされています。証明責任、挙証責任などともいい、
立証責任の転換とは、その立証責任を本来分配されるべき一方の当事者から他の当事者に転換させることをいいます。
|
内容 |
①立証責任の転換の意義
(a)例えば特許侵害の訴訟が提起されたときには、在るとも無いとも証明できたときに備えて、立証できないときにどちらの当事者が不利益を負うかを予め定めています。こうした不利益を立証責任といい、これをどちらが負うかを定めたルールを立証責任の分配といいます。
(b)立証責任の分配は、法律の条文ごとに決まり、訴訟の進行中に当該分配が変更されることがありません。 →立証責任の分配とは
(c)そして通常は、裁判所に対して自らに有利な判決(特許侵害訴訟であれば損害賠償の請求・差止請求)を求める側がその責任を負います。
(d)しかしながら、特許権は、特許要件(新規性や進歩性など)を具備する発明に対して特許付与の意思表示である特許出願をすることで与えられるものであり、保護対象が無体物であるために、事実上の占有が困難であるという特殊性があります。こうした点に鑑み、立証責任の転換が行われています。
②立証責任の転換の内容
(a)損害額の推定(特許法第102条第2項))
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときには、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定されます。
その侵害行為がなかったときには、特許権者等の製品がもっと売れるなどして利益があった筈だと経験的に推測できても、具体的に幾らの利益があった筈を証明することは極めて困難です。そこで前記損害額の推定の規定を置いています。
→損害額の推定とは
もっとも侵害に係る特許発明が実施されている部分が権利者製品の一部に留まっている場合は、いわゆる寄与率の考え方から金額が限定される可能性があります。
→寄与率とは
(b)過失の推定(特許法第103条)
他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定されます。
特許権の内容は、登録原簿などにより公示されており、かつ特許権・専用実施権の侵害となるのは業としての実施に限られるので、立証責任を転換したのです。
立証責任を転換しただけなので、過失がなかったことを相手方が立証することは可能です。例えば特許出願の時点において前述の新規性や進歩性を欠いており、特許無効の抗弁(無効審判により無効とされるべきものと認められる旨の抗弁)が可能な場合です。
→過失の推定とは
(c)生産方法の推定(特許法第104条)
物を生産する方法に発明について特許がされている場合には、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときには、その物と同一の物は、その方法により生産した物と推定されます。
生産された物からその物が推定された方法を推定するのは、多くの場合に困難だからであり、それよりも「特許出願前に日本国内において公然知られた物でない」ことを証明する方がより容易だからです。
→生産方法の推定とは
|
留意点 |
|
次ページ
※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。 |
|