内容 |
@事例1
[事件番号] 昭和51年(行ウ)第178号
[事件の種類]異議申立棄却決定取消請求事件(否認)
[判決言い渡し日]昭和52年3月30日
[発明の名称]米菓の製造法
[主要論点]特許出願の拒絶審決に対して審決取消訴訟が提起され、その請求が退けられた場合には審決の確定とともに特許出願の拒絶査定もその謄本の送達日から30日を経過したときを以て確定するか否か。
「事件の経緯」
(a)原告は、
昭和四三年九月八日、発明の名称「油としよう油とで味付された米菓の製造法」について、昭和四三年特許願第六四七三八号として特許出願Aをし、その拒絶査定を受けたため、
昭和四六年六月二八日、これを不服として、拒絶査定審判の請求をし、
昭和四七年三月二二日付で審判請求書に貼用すべき収入印紙に不足があるとして審判請求書について却下の決定を受け、その決定書謄本が送達されたため、
昭和四七年六月五日、東京高等裁判所に対し、右却下決定の取消訴訟を提起したが、請求棄却され、これに対して最高裁判所に上告したが、上告棄却となり、右判決は確定した。
(b)他方、原告は、
昭和四六年六月二八日にAの分割出願である特許出願Bをした。
なお、特許出願Aは、昭和四五年の特許法改正法の施行前にされたものであり、右改正前の特許法第四四条第二項は、特許出願の分割は当該出願について査定又は審決が確定するまですることができる旨規定していた。
(c)被告(特許庁)は、一旦は特許出願Bを出願番号昭和四八年特許願第一三一三一号として受理しながら、その後、特許出願Bの願書は受理しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をし、右処分の通知は、その頃、原告に到達した。
被告の本件処分の理由は、特許出願BはAについて昭和四六年五月六日にされた拒絶査定の確定後にされたものであるということである。
(d)そこで、原告は、被告に対し、本件処分について、行政不服審査法による異議申立てをしたところ、被告は、本件処分を正当として、右異議申立てを棄却する旨の決定をし、右決定書謄本は、原告に送達された。
[裁判所の判断]
原告は、特許出願の拒絶審決に対して提訴するとともに当該特許出願(親出願)を分割して新たな特許出願(子出願)を行いましたが、拒絶審決の確定により拒絶査定もその謄本の送達日から30日を経過した時に遡って確定するので、拒絶査定の確定後にされた子出願は分割出願として不適当と裁判所は判断しました。
特許出願人は、審決取消訴訟の判決の確定時を以て拒絶査定も確定するので子出願は分割出願として有効と主張しましたが、その主張は認められませんでした。
特許庁は親出願に対する拒絶査定は審決が取り消すまでは公定力が働き、当該処分に対する不服申立の手段が尽きた時に不可変更力を生ずるという理由で子出願を不受理処分としました。直ちに不受理としたことには法的な瑕疵がありますが、審決取消訴訟の判決が確定したことにより前記瑕疵は治癒したと裁判所は判断しました。
○事例2
[事件番号] 昭和62年(行ケ)第122号
[事件の種類]審決取消訴訟(否認)
[判決言い渡し日]昭和63年8月16日
[発明の名称]仮燃装置
[主要論点]分割出願(子出願)が不適法であると認定した拒絶審決が出されたときには特許庁に対して不可変更力が、当該審決に確定により特許出願人に対して不可争力がそれぞれ発生するしますが、この不可争力や不可変更力が当該子出願をさらに分割した特許出願(孫出願)に及ぶか否か。
「事件の経緯]
原告は、名称を摩擦仮撚装置」(その後「仮撚装置」と補正)とする発明について、
昭和50年6月24日にした特許出願Aをし、
昭和51年7月21日にAを出願分割して特許出願Bをし、
昭和52年3月28日にBを分割して特許出願Cを行い、
昭和52年12月30日にCをもう一度分割して特許出願Dをしたところ、
昭和58年3月10日特許出願Dが出願公告(特公昭58−12941号)されましたが、特許異議の申立てがありました。
昭和61年1月27日に拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判を請求し、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)があったので審決取消訴訟を提起しました。
異議申立人は、前記異議申立書及び上申書において「1回目および2回目の分割出願の特許請求の範囲の記載が確定するまで本件異議の審査を中止し、それら特許請求の範囲が確定後に審査を再開されることを希望する」旨述べました。
また前記特許出願Cについては、原出願からの分割が適法になされていない旨の拒絶理由通知書が出されており、これに対して特許出願人が意見書を提出しなかったため、適法に分割されなかった旨の審決が確定しています。
特許出願人は、意見書を提出しなかった理由として、特許出願Cの発明について特許を受ける経済的な利益がないと判断したためであり、分割出願が不適法という拒絶理由に承服したものではなかったと説明しています。
[裁判所の判断]
特許庁審判官が特許出願の拒絶査定に対する審判事件手続でした審決が確定したときは、その確定審決は、審決の結論及びその理由中の判断について当事者を拘束し、審判請求人をしてその効力を争い得ない不可争力、特許庁をしてその効力を変更することを得ない不可変更力を有し、かつその効力は審判の当事者のみならず第三者に対しても及ぶため、親出願から子出願を、子出願から孫出願をそれぞれ出願分割した場合であって、子出願が分割出願として不適当である旨の審決が確定したときには、孫出願の遡及効は親出願の出願日までは及びません。
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