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1259 均等論の第3要件/特許出願/進歩性 |
体系 |
権利内容 |
用語 |
均等論の第3要件 |
意味 |
均等論の第3要件とは、相違部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において容易に想到できたことです。
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内容 |
@均等論の第3要件の意義
(a)均等論とは、特許権の効力範囲を、特許権の請求の範囲の文言通りの範囲から拡張する解釈論です。
(b)特許発明の技術的範囲は、願書(特許出願の願書をいう)に添付した請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない、と定められています(特許法第70条第2項)。
・すなわち、独占権付与請求の意思表示である特許出願の手続において、出願人自身の責任で保護を求める範囲を設定させ、
・特許出願の審査を行う審査官や審判官は当該出願を拒絶することはあっても、保護範囲を定めることに主導的に関わることはない、
・当該特許出願について設定登録された後に特許権者が請求の範囲の記載を離れて権利の主張をすることは許されない
というのが特許法の基本的な考え方です。
(c)しかしながら、特許出願人が将来の侵害の態様を全て想定して請求の範囲を記載するのは、困難であるため、発明の構成要件の一部を他に置き換えても同一の作用・効果を奏するが故に置換が可能であるという要件(置換可能性)を満たすには、特許権の権利範囲の拡張を認めて欲しいという要請が産業界には存在しました。
(d)もっともその置き換えが当業者にとって容易に思いつく範囲でなければ、第三者に不測の不利益を与えるおそれがあります。
→均等論の第3要件のケーススタディ1
前述の置換可能性の他に、置換容易性が均等論の要件として挙げられています。
(e)均等論の第3要件は、第1要件(本質的事項でないこと)及び第2要件(置換可能性)とともに均等論の積極的要件と言われることがあります。
A均等論の第3要件の内容
(a)置換容易性を判断するときには、発明の目的との関係で発明の技術的価値を見極める必要があります。
例えば、“鈎”と“鈎”とが結合するタイプの従来の面ファスナーの問題点(結合し易いが不意の剥離も生じ易い)を解決するために、一方の鈎を“ループ”に置き換えることを特許出願人が想起して特許権を取得した場合に、発明の本質的事項はループであり、鈎は本質ではないから、鈎の代替手段として特許出願前に公知であった“キノコ状片”を“鈎”の代わりに採用することは当業者にとって容易であるので、均等とは認められないと判断された事例があります(昭和44年(ネ)第575号/均等/本質・容易/ベルクロ・ファスナー)。
(a)置換容易性の「容易」とは、進歩性の容易と同じレベルを言うのか、それより低い程度をいうのかに関しては論争がありますが、後者が有力であると考えられます。
そうしないと均等の範囲が過剰に広くなるからです。
(b)後者の立場に立つ判例を紹介します。
“(置換容易性の)想到の容易さの程度は、特許法二九条二項(進歩性の規定)所定の、公知の発明に基づいて「容易に発明をすることができた」という場合とは異なり、当業者であれば誰もが、特許請求の範囲に明記されているのと同じように認識できる程度の容易さと解すべきである。”(平成3年(ワ)第10687号/負荷装置システム事件)
→均等論の第3要件及び進歩性の関係
(b)均等論の第3要件(置換容易性)の判断時期は、侵害行為の時と解釈されます。 →均等論の第3要件の判断時期
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留意点 |
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