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303 特許出願の処理/包袋禁反言(意味) |
体系 |
特許出願の審査 |
用語 |
包袋禁反言の原則が適用されない場合 |
意味 |
包袋禁反言の原則とは、特許出願人が審査段階で意見書や補正書により或る意思の表示(先行技術との相違点などの主張など)を行い、審査官がこれを信じて特許を付与した場合には、権利者は、その意思表示と矛盾するような特許権の主張をすることができないという原則を言います。
ここでは本原則が適用されない場合に関して解説します。
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内容 |
①包袋禁反言の原則の意義
(a)包袋禁反言の原則は、一般法上の禁反言の原則に由来するものです。一般的な禁反言の原則は、A及びBの間で、Aが行った意思表示をBが信じて、何事か(例えばAとの契約)をした場合に、Aがその意思表示を覆すことができないというものです。
言い換えればAの意思表示を信じたBを保護することが趣旨であり、もともと、BがAを信用していなかったのであれば、保護する理由はないということになります。
→禁反言の原則とは(一般法の)
包袋禁反言の原則の場合も同様に、審査官が特許出願人による意思表示を信じて特許査定をしたと言い難い場合には、この原則を適用することは妥当ではありません。
(b)また、ある特許権が形成された過程とは直接関係ない場面において、特許出願人の意思表示があった場合には、必ずしも本原則を適用することは妥当ではありません。
②包袋禁反言の原則が適用できない場合の内容
(a)審査官が特許出願人の意見を信じて特許査定したとは認められない場合
例えば特許出願人が主張する発明の効果が技術的に間違っている(自然法則に反しているなど)場合、或いは、間違っていないにしても、当該効果を誇張して主張している場合であって、状況的に審査官がその主張を信じていないと認められるときが該当します。
例えば審査官が第1番目の拒絶理由通知(新規性・進歩性などの欠如)に対する特許出願人の意見書等での主張を頻用せず、第2回目の拒絶理由通知で請求の範囲を限定して特許に至った場合が該当します。
(b)特許出願人が意思表示をした場面が、問題の特許権が形成された段階とは直接関係しない場合
例えば分割出願に対して付与された特許権の解釈において、原出願(出願分割の基礎となった特許出願)の出願経過の経緯を参酌するのは一般的に妥当ではありません。
(平成8年(ワ)1597号「サーマルヘッド」)
特許出願の手続は別個独立に行われるからです。
→包袋禁反言の原則の適用範囲とは(異なる特許出願での事情)
なお、これは我が国での考え方であり、米国では、同じ特許出願から派生した他の特許出願(分割出願、継続出願、一部継続出願)の出願経過が参酌されます。
Jonsson v. The Stanley Works、 903 F.2d 812、817-818 他
→特許出願の経過から生ずるエストッペルとは(Estoppel)
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留意点 |
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