パテントに関する専門用語
  

 No:  375   

進歩性審査基準(特許出願の要件)/発明の構成2

 
体系 実体法
用語

発明の構成とは(その2)

意味  発明の構成とは、発明の課題を解決するために講じられた手段です。

内容 @物の発明にあっては、発明の構成とは物の構造をいいますが、物の構造を用途で特定する場合があります。→発明特定事項の機能
 例えば特許出願の請求項に「〜の形状を有するクレーン用フック」という用語が記載されていた場合には、技術常識に照らして、クレーンに用いるのに適した大きさや強さを有する構造と解釈され、同様の形状を有する釣り用フックと区別されます。

A引用文献の内容に請求項に係る発明に対する示唆があるときには、進歩性を否定的に評価する材料となりますが、その際には、その示唆と他の引用例とを組み合わせて、発明の構成に至ることができるほどの示唆であるのかどうかが問題となります。

{“発明の構成”の用例3}

「引用例には、陽イオン性でしかも化学的前処理が不必要な水性電着浴を得るという本願発明と同様の目的に適する金属イオンとして、電位列中の電位が鉄の電位よりも高いものという条件が挙げられており、具体的に7種の金属イオンが例示されている。この中には本願発明の特定構成である鉛イオンは記載されていないが、鉛は電位列中の電位が鉄の電位よりも高いことは周知の事実であるから、鉛イオンを用いることは引用例に示唆されているといえる。(参考:昭 61(行ケ)240)」(進歩性審査基準より)

B本願発明と引用発明との課題が異なっていても、別の課題により本願発明と同じ構成に到達することが容易であるときには、進歩性を否定できるという判例があります。

{“発明の構成”の用例4}

「本願発明は、表面に付着する水を逃がすために、カーボン製ディスクブレーキに溝を設けたもの。一方、引用発明 1には、カーボン製ディスクブレーキが記載されている。引用発明 2には、表面に付着する埃を除去する目的で、金属製のディスクブレーキに溝を設けたものが記載されている。この場合、引用発明 1のカーボン製ディスクブレーキにおいても、表面に付着する埃が制動の妨げになることが、ブレーキの一般的な機能から明らかであるから、このような問題をなくすために引用発明2の技術に倣ってカーボン製ディスクブレーキに溝を設けることは、当業者が容易になし得る技術改良であり、その結果、本願発明と同じ構成が得られるので、本願発明は進歩性を有しない。(参考: 201USPQ658)」

(進歩性審査基準より)

Cなお、平成6年の改正により、特許出願の請求の範囲には、“発明の構成に欠くことのできない事項のみ”に代えて、“特許出願人が発明の特定に必要と認める事項の全て”を記載するべきこととされ、これに伴って進歩性審査基準も書き改められたため、“発明の構成”という言葉も審査基準のうち判例引用箇所に残るのみとなりました。しかし改正の趣旨は、例えば物の発明を特定するにあたって、その物の構成だけでなく、作用・効果・その他の事項(製造方法など)を用いることができるようにしたということであり、既存の判例における“発明の構成”に関する判示が無意味になったものではありません。
→{発明の構成とは(その1)}


留意点  米国のMEPE(我が国の進歩性審査基準に相当するもの)では、技術文献が先行技術として引用できる程度に類似の技術(analogous art)であるかどうかを判断する際に、文献発明の“structure and function”(構成及び機能)に着眼するとしています。



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