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①所要の目的・効果を達成するための技術的手段から無駄な要素を省こうとすることは、当業者の通常の能力の発揮であるといえます。しかしながら、発明の本質的な要素を省略すると、目的・効果を達成できなくなります。従って発明特定事項の省略であれば常に当業者にとって容易とは言えません。
②引用文献の請求項に要素A+B+Cからなる発明が記載されていた場合には、この発明は必須の要素A、B、Cが一体となって成立しているものであるので、そこから一部Cの要素を省略することはできない、という見方をすることもできます。
③しかしながら、技術は累積的に進歩するものであり、先行発明A+Bの上に新たな発明A+B+Cが成り立っていることが、明細書の記載又は特許出願時の技術常識から読み取ることができる場合があります。例えば下記の押し花の事例がそうです。要素Cは補強材であり、特に補強を必要としないときに補強材を用いない形でA+Bを実施することは、常識的なことでした。従って要素Cを省略して発明を認定することが可能となったのです。
{省略が自明であると判断された事例}
④進歩性審査基準に押し花製作法の事例があります(平成6年(行ケ)第82、83号)。補強材で補強されていない布や紙を植物体を挟む基材として用いることは、押し花製作法における周知・慣用の技術であり、引用発明の可撓性吸湿板のように補強した布や紙を用いる必要のない場合、この補強材を省いて、塩化カルシウムを吸蔵させた布や紙を基材として用いようとすることは、当業者のみならず、押し花を製作してみようと試みる一般人にとっても、単なる設計的事項若しくは容易に考え出せることである、と判断されました。
⑤進歩性審査基準に「ロボットを備えた箱処理装置」の事例があります(平成10年(行ケ)第131号)。特許出願に係る発明は、物品を箱に詰めて箱を積載するロボットであり、引用文献には作業ラインに箱詰ロボット→自動梱包機→積載ロボットを配置した構成が記載されていました。審判では中間に箱詰ロボットと積載ロボットとの間に自動梱包機があることが二つのロボットを箱詰・積載ロボットとすることの阻害要因となると判断しましたが、裁判所で審決が覆されました。省スペース、省コストは作業ラインにも求められる一般的な課題であり、自動梱包をするか否かは設計的事項に過ぎないからです。
{省略が自明でないと判断された事例}
⑦「粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにその装置」事件(平成21年(行ケ)第10142号)では、引用発明の本質的部分に関して判示した事例です。
本件発明は、排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと、流動ポッパーの出入り口に連通して材料を供給する供給管と、供給管に接続した一時保留ホッパーとを具備し、流動ホッパーの出入口は供給管とのみ接続していました。
他方、引用文献は、材料混合タンクの底面に材料供給兼排出管と材料排出専用管とを設けた技術であり、前者を通じて材料を供給している間に後者を通じて材料を排出することができることが特徴です。
裁判所は、材料供給兼排出管と別個に材料排出専用管を設けたことが引用発明の本質的部分であるので、これを除外した構成を引用発明から想到するのは容易ではないと判断しました。
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