内容 |
①KSR判決は、自動車のスロットル制御用のセンサの位置を、最適な位置(ペダルの軸)に設置することが容易かどうかを争った事例です(550 U.S.127)。
②CAFCは、自らの判例に基づいて当該案件にTSMテストを行い、その構成が当業者にとって自明であるとは言えないと判決しました。その根拠は、“当業者が調整可能なペダルにセンサを適用するに際し、異なる目的(一定比率の課題の解決)の引用例にセンサを設けることを検討する理由がない”というものでした。
しかしながら、このTSMテストに関しては、柔軟性に欠けた判断手法であるとして批判がありました。→KSR判決の意義(先例との関係)
③最高裁判所は、CAFCの判断を覆して、上記の発明が自明であると判断するとともに、TSMテストの厳格な適用を批判しました。その理由の一部は次の通りです。
“当業者は自動人形ではなく創造力を持った人であるから、設計のインセンティブや市場の要請は或る分野の研究成果を変形することを促すと解釈され、
技術常識は、よく知られた技術的事項が主目的を超えた自明の用途を持ってもよくかつ複数の特許を一緒に適合することができることを教示しているから、
引用例の目的がペダルの調整と異なることは当該特許の適用の阻害要因とはならない。”
④KSR判決後にMEPEが修正され、“先行技術要素を公知の態様によって予期可能な結果(predictable results)を生ずるように組み合わせること”など、自明となり得る事項が例示されました。
⑤日本の進歩性審査基準においても“一定の課題を解決するために公知材料の中からの最適材料の選択、数値範囲の最適化又は好適化、均等物による置換、技術の具体的適用に伴う設計変更などは、当業者の通常の創作能力の発揮である”と述べています。
(イ)いわゆる設計的事項を例示的に列挙したものであり、先行技術との相違点がこれらのみである場合には、特許出願をしても拒絶査定になる可能性が高いと言えます。
(ロ)但し、一見設計的事項に見える事柄でも、他の技術要素と組み合わせて独特の作用効果を発揮する場合には、設計的変更とは似て非なるものであり、別異の技術的思想が成立しているというべきです。
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