パテントに関する専門用語
  

 No:  470   

特許出願の査定後/特許権/技術的範囲

 
体系 権利内容
用語

特許発明の技術的範囲

意味  特許発明の技術的範囲とは、特許発明が技術的な観点から有する一定の広がりであり、特許権の権利範囲と同義と解されます。


内容 ①特許出願人は、一定の広がりを有する技術的思想の範囲を自ら定めて、特許請求の範囲に特定し、特定した思想の範囲を明細書や図面によってサポートし、特許出願の審査を経て権利を取得します。従って特許権の権利範囲、すなわち、特許発明の技術的範囲は、特許出願人が作成した出願書類に基づき、特許出願の経過なども必要に応じて参酌して、客観的に定める必要があります。

②原則的基準

(イ)特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定められます(特許法第70条第1項)。

(ロ)旧特許法では、特許請求の範囲は単に発明にインデックスに過ぎないというような見解が唱えられ、混乱を生じたため、特許請求の範囲に基づくことが条文上明らかにされました。

(ハ)従って明細書や図面にのみ記載された発明は技術的範囲に含まれません。

(ニ)特許請求の範囲に例えばA+B+Cのように複数の発明特定事項が記載されているとき、これらA、B、Cの要件全部が実施されたときに特許発明が実施されたことになり、一部の実施だけでは特許侵害とはなりません(→権利一体の原則とは)。

 発明特定事項の全部を実施したか否かを判断するツールとして、例えばクレームチャートがあります(→クレームチャートとは)。

③参酌事項

(a)特許発明の技術的範囲を定める場合において、願書に添付した明細書・図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意味を解釈するものとします(特許法第70条第2項)。

(イ)明細書の権利書としての機能を考慮したためです。
特許請求の範囲に記載された用語の意味

(ロ)しかしながら、単に請求の範囲に記載された発明特定事項(例えばリパーゼ)に対応して明細書に下位概念(例えばRaリパーゼ)しか記載していないことを以て、上位概念で記載した発明特定事項を減縮解釈するべきではありません。

なお、リパーゼとは、脂肪を分解する働きを有する酵素です。



(b)特許出願の経過、具体的には、特許出願の審査において特許出願人が意見書で陳述した事項などは、特許発明の技術的範囲を解釈するときに、参酌される可能性があります。

(イ)法令の解釈に立法過程が参酌されるのと同様の趣旨であると言われています。

(ロ)具体的には、特許出願人が述べた発明特定事項の釈明や効果の主張と矛盾する権利範囲を主張することはできません(→包袋禁反言の原則)。

(c)請求の範囲に記載された発明と技術的に均等な発明は、特許発明の技術的範囲に属します(→均等論)。


留意点

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