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483 特許出願の査定後/特許権/利用発明 |
体系 |
権利内容 |
用語 |
思想上の利用発明 |
意味 |
思想上の利用発明とは、先願(先の特許出願等)に係る発明の構成要件をそっくり含み、さらに別の技術的な要素を付加した発明をいいます。
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内容 |
①思想上の利用発明の意義
(a)科学技術は、古い技術の上に新しい技術が累積して進歩していくものであり、既存の技術を発展させていくことが重要となります。
(b)技術の発展の態様としては、例えば要素a+b+cからなる発明のうち要素cをより良いものに置き換えて同種の効果(好ましくはより優れた効果)を生み出す場合もありますし、要素a+b+cに新たな要素dを加えて同じ効果と追加の効果とを生み出す場合があります。
(c)どちらも特許法上の保護に値する有意義な発明ですが、後者の場合に、他人の特許出願の発明を利用するものであって、他人に特許権が成立しているときには両者の調整が必要となります。先の特許出願に係る権利者との利益のバランスを損なわないように後願の権利内容も実施できるようにしなければならないからです。
(d)そこで特許法第72条で利用発明の実施を制限するとともに、同92条で利用発明の実施を可能とするための裁定制度を設けています。
(e)なお、特許法第72条の利用発明には、思想上の利用の他に実施上の利用発明がありますが、ここでは前者について解説します。→実施上の利用発明とは
②思想上の利用発明の内容
(a)思想上の利用概念に関しては、従来いろいろな説がありましたが、現在では、先願発明の構成要件(請求項に記載された発明特定事項)の全てをそっくり含むという見解が定説になっています。→そっくり説とは
(b)例えば、先の特許出願人が物質を超電導状態にする技術を発明し、後の特許出願人がその技術をそっくり用いるとともに、当該物質で形成したループ体に電流を循環させ、エネルギーとして蓄える蓄電技術を発明したとすれば、思想上の利用発明となります。
(c)もっとも形式的に先願発明の構成要素(a+b+c)をそっくり含んでいても、別の要素dを付加することで、先願発明の効果を発揮しないことがあります。
その要素を付加することにより、思想としての一体性が損なわれるからです。 →利用発明のケーススタディ(利用関係不成立)
(d)別の要素の付加には二つの態様があると言われています。
第一の態様は、元の要素a、b、cと同格の要素eを付加する外部付加です。 →外部付加とは
第二の態様は、元の要素の一つをさらに限定する要素を加える内部付加です。 →内部付加とは
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留意点 |
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