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①特許出願のclaimの意義
(a)特許出願の保護対象である発明は、何らかのsubject-matter(発明の主題)を含むアイディアであり、抽象的なものです。他人が製造する物や実施する方法がその発明の範囲を入るかどうかを判定するためには、その発明の範囲を明確に定義(define)する必要があります。その役割を果たすのがclaimです。
(b)特許制度の初期の段階では、特許出願人は、単に自分の発明を書面に書き表したもの(written description)、今日でいう明細書を願書に添付しておけばよかったのですが、発明者は自分の発明が如何に優れたものであるかを強調するために、最良の実施形態のみを詳しく説明することになりがちです。要素A+Bだけでも発明として十分成り立つのに、要素A、B、C、D…を詳細に説明した文章を記載したとすれば、この文章を読んだ人には、A+B、A+B+C、A+B+C+Dのどれが発明の範囲か分かりません。特許出願が許可になったあとで、権利者がC・Dは任意的な要素であると主張し、同業者との間に特許上の紛争を生ずるのは好ましくありません。
(c)そこで米国では1836年特許法の施行以来、claimは特許出願の必須の要素となっています。
②特許出願のclaimの内容
(a)審査官が特許出願を審査するときには、出願書類全体から発明を理解しようとしますが、新規性、進歩性(非自明性)などの要件の審査対象となるのは、claimです。
従って特許出願人が審査官の拒絶理由通知(アクション)に対して発明の特徴を挙げて反論する際には、その特徴的事項がclaimに記載された限定条件であることが必要です。
(b)claimに記載された限定条件が抽象的に記載されている場合、その条件を広くも狭くも解釈できる場合があります。そうした場合に審査官は合理的な範囲で最も広い解釈を採ります。何故なら権利者は自分の権利を最も広く解釈しようとするものだからです。
→broadest reasonable interpretationとは
特許出願人の側からすると、特許出願中のクレームのある限定条件を、上位概念的事項A及び下位概念的事項aの何れにも解釈することが可能であるときに、特許出願人の意図としては下位概念的事項aと解釈して、先行技術との差異があるとしても、審査官は上位概念的事項Aと解釈して、進歩性が否定される場合があるので、注意が必要です。
③特許出願のclaimの記載形式
(a)特許出願人は、claimを記載するときに自分の発明の構成要件のうち公知の部分とそうでない部分とを明確に区別する記載方法と、両者を明確に区別せずに保護される発明の範囲だけを規定する記載方法とがあります。前者をJepson claimの記載方式といい、ここではそれ以外の記載を仮に通常の記載方式といいます。 →Jepson claimとは
(b)国・地域によっては、Jepson claimの記載方式を原則としていることもありますが、米国ではこの記載方式はあまり好まれません。意見書中での先行技術と対比するような場合は仕方ないとして、特許出願人の側から発明の特徴的事項を強調したくないという意識が働くからです。
(c)外国の特許出願に基づくパリ条約優先権を主張して米国に特許出願を行う場合には、外国の特許出願がJepson claimを含んでいることがあります。そうした場合には他のクレーム形式への変更が必要か否かを検討することが望まれます。
④特許出願のclaimの種類
Claimのうち、同じ特許出願の他のclaimの記載要件を引用しているものをDependant claim(従属項)といい、そうした引用形式を採らず、それ自体の記載で発明の全ての構成要件を特定しているものをIndependant claim(独立項)といいます。
⑤特許出願のclaimの構成
(a)Jepson claimの記載方式に限らず、クレームを二つの部分に区分して書くことは良くあります。一般的なものは、クレームの対象の概要を簡潔に表す前半部とさらに詳しい条件を追加する後半部とに分けることです。例えば、
A liquid container support (発明の対象)for dispensing drinking liquid (発明の用途)comprising A…,B….,C….(発明の構成要素)
というがあったとすると、斜体の部分が前半部、それ以外が後半部です。
斜体の部分をpreambleといい、後半部の冒頭の接続句(この場合にはcomprising)をtransition phraseといいます。 →Transition termとは(特許出願の)
⑤特許出願のclaimの取り扱い
前述の通り、claimは、特許出願の係属中は審査対象である発明を規定する意義を有し、特許出願が許可され、権利が発生した後には、権利範囲を規定する役割を持ちます。
→{claimとは(特許の)}
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