体系 |
特許申請及びこれに付随する手続 |
用語 |
機能的クレームのケーススタディ1 |
意義 |
機能的表現により発明を特定するクレームを、機能的クレームといいますが、その機能的表現が抽象的であり、請求の範囲の記載の全部又は一部が例えば単に発明の課題を示しているに過ぎないと認められるときには、特許出願の明細書・図面の記載を中心として当該機能的表現を限定的に解釈しようという傾向が強まります。
ここでは、抽象的な機能的クレームのうち比較的古い時代のものと紹介します。
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内容 |
事例1 昭和44年(ワ)第6127号
〔問題となった表現〕 「選出した中間部品は計測手段と協力する組立手段により、検査された内外両部品と組み立てられる」
〔発明の名称〕 ボールベアリング自動選択、組立装置
〔特許出願人が明細書・図面に開示した実施態様の程度〕
唯一の実施例のみ開示
〔裁判所のクレームの評価〕 内外及び中間の部品を自動的に選択して組立てるという課題の提示に過ぎない。
〔裁判所の解釈の指針〕 実施例から把握できる技術的思想に限定
〔係争物の技術的範囲への属否の判断〕
計測手段と組立手段とは少なくとも1対1対応でなければならず、そういう関係ではない係争物は技術的範囲に属しない。
事例2 昭和50年(ワ)第2564号
〔発明の名称〕 貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置
〔問題となった表現〕 「鍵2の挿入または抜取りにより硬貨投入口8を開閉する遮蔽板9」
〔特許出願人が明細書・図面に開示した実施態様の程度〕 唯一の実施例のみ開示
〔裁判所のクレームの評価〕
貸ロツカーの硬貨投入口を開閉する装置を構成する課題の提示のみである。
〔裁判所の解釈の指針〕 実施例から把握できる実施例に限定
〔係争物の技術的範囲への属否の判断〕
本件登録実用新案の実施例では力伝達手段としてクランクアームを使用しており、係争物が使用しているカムは開示されていないから、技術的範囲に属しない。
事例3 平成8年(ワ)第22124号
〔発明の名称〕 磁気媒体リーダー
〔問題となった表現〕
磁気ヘッド3が下降位置にあるときは上記磁気ヘッド3の回動を規制し、上記磁気ヘッド3が媒体との摺接位置にあるときは上記磁気ヘッド3を回動自在とする回動規制手段
〔特許出願人が明細書・図面に開示した実施態様の程度〕 唯一の実施例のみ開示
〔裁判所のクレームの評価〕
「磁気ヘッドが下降位置にあるときは上記磁気ヘッドの回動を規制し、」との記載は、「磁気ヘッドがホームポジション又はエンドポジションで停止しても磁気ヘッドが正常な姿勢でいるようにした」という本件考案の目的そのものを記載したものにすぎない。
〔裁判所の解釈の指針〕
明細書の記載を参酌し、そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて技術的範囲を確定すべきである。
〔係争物の技術的範囲への属否の判断〕
特許出願人が「回動規制手段」について明細書で開示している構成は、保持板及び磁気ヘッドホルダーの双方に回動規制板を設け、その一方に係合部(上下方向に幅が変化する略三角形状の孔)を、他方にピンを設けるという構成、並びに、保持板及び磁気ヘッドホルダーのいずれか一方に設けた回動固定板に係合部を設け、他方にピンを固定するという構成しかなく、これに該当しない係争物は、本件技術的範囲に属しない。
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留意点 |
より最近の事例に関しては下記を参照して下さい。 →機能的クレームのケーススタディ2
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