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水平線

●381 F.3d1320 (In re Bigio)

機能及び構造の参酌/発明の試みの範囲/進歩性

 [判決言い渡し日]
2004年8月24日
 [発明の名称]
ヘアブラシ
 [主要論点]
進歩性の判断における先行技術の引用例適格性が論じられました。歯ブラシの引用文献のみでヘアブラシの発明の進歩性を否定することの是非が判断されました。

 [判例の要点]
 米国の特許実務では、
(イ)進歩性の判断における引用例適格性は、特許出願に係る発明と技術的に類似する場合にのみ認められる、

(ロ)技術的な類似性は、発明者の試みの範囲(Field of Endeavor)にあるときだけでなく、発明者が解決しようとする課題に合理的に関係するときもみとめられる、と解釈されていますが、

 先行技術文献が発明者の試みの範囲に属するか否かは、特許出願に係る発明の機能及び構造を含めて、特許出願における発明の主題の説明を参酌して決定すべきです。

 [本件へのあてはめ]
 特許出願に係るヘアブラシの発明と引用例に記載された歯ブラシとは、中央部がくびれた形状というユニークな形状(構造)において共通し、それにより、引用例は、身体との接触面積を増やすという本件特許出願の課題に合理的に関係すると認められます。

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 [後の関連判決]
  647 F.3d 1343 (In re Klein) {課題の共通性}
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●昭57(ワ)7035号

 [判決言い渡し日]
昭和59年12月20日
 [発明の名称]
ヘアーブラシ
 [主要論点]
①完全独占的通常実施権者は、侵害者に対する差止請求権を有するか。

②完全独占的通常実施権者は、侵害者に対し、損害賠償を請求できるか。

 [判例の要点]
 独占的通常実施権に基づく差止請求権の行使はできません。∵独占的通常実施権といえども本来通常実施権であり、意匠権者は、実施権者の実施を容認する義務を負うに留まり、無承諾実施者の行為を排除し通常実施権者の損害を避止する義務まで負うものではない。

 [本件へのあてはめ]
 Yは意匠権者Xから意匠権の全範囲について専用実施権の設定を受けたが、Zの商品販売時に未だ専用実施権の登録を受けておらず、Yの権利は独占的通常実施権に相当します。とすればYはZに対して損害賠償請求権を行使できますが(∵期待権保護のため)、差止請求権の行使、差止請求権の代位行使は認めれられません。

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●平9(行ケ)111号(紫外線で硬化可能なクリアーコート組成物)

明細書に記載されていない発明の課題/発明の課題の参酌/進歩性

 [判決言い渡し日]
平成11年5月19日
 [発明の名称]
紫外線で硬化可能なクリアーコート組成物
 [主要論点]
進歩性の判断において特許出願の明細書に記載されていない発明の課題を参酌すべきか否か。

 [判例の要点]
 進歩性の判断において、発明の課題を考慮することが大切ですが、当事者が主張する課題が、特許出願の明細書から読み取ることができるかどうかが重要となります。

 [本件へのあてはめ]
 本願明細書には、硬化フィルムの軟化の技術課題の存在についての記載はなく、また、甲主張の技術手段を含め、かかる課題を解決するための技術手段に関する記載も一切存在せず、これを示唆するような記載も見い出すことができません。

 そうすると、審決が、「一般にこの種コーティング組成物において、塗布手段あるいは塗布条件などに応じて、不活性溶剤を適宜含有させ、粘度などを調整することは慣用手段・・・であり、さらに引用例記載の発明において、不活性溶剤を用いるに当たり格別な技術的支障があるとはいえないので、引用例記載の発明において不活性溶剤を併用することは、当業者が容易に想到できたことといえる。」とした判断に誤りはありません。

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●平9年(行ケ)第86号(緊急車運行制御システム事件)

適用を妨げる別段の事情/設計変更の評価/進歩性

 [判決言い渡し日]
平成10年7月16日
 [発明の名称]
緊急車運行制御システム
 [主要論点]
進歩性の判断における引用例の設計の変更の評価

 [判例の要点]
 一般的に周知と認められる技術手段を、特別の技術分野の引用例の発明の構成要素に代えて適用することは、その適用を妨げる別段の事情が窺えない限り、当業者にとって容易であると認められます。

 [本件へのあてはめ]
 緊急自動車通過時に一般自動車を一時停止させる交通信号機の引用例の発明に、マイクロ波又はミリ波を用いた信号伝達手段に代えて、周知例に開示された赤外線波を用いた信号伝達手段を適用することは、適用することを妨げません

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●平24年(ネ)第10015号(ゴミ貯蔵カセット)

損害額の推定(特許権者の国内不実施)・進歩性

 [判決言い渡し日]
平成25年 2月1日
 [発明の名称]
ゴミ貯蔵カセット
 [主要論点]
特許権者が国内で特許発明を実施していなかったことは損害額の推定の規定の適用を免れる理由となるか。+進歩性の判断(発明の課題の相違)

 [判例の要点]
①次の事情を総合すれば、特許権者が当該特許発明を実施していることは,同項を適用するための要件とはいえません。

(ア)特許法102条2項には特許権者が当該特許発明の実施をしていることを要する旨の文言は存在しないこと。

(イ)同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨のものであり,また推定規定であることに照らすと,同項を適用するに当たり殊更厳格な要件を課すことは妥当を欠くこと。

②すなわち、特許法102条2項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨であり、その効果も推定にすぎないことからすれば,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきです。

 [本件へのあてはめ]
 特許権者が日本国内では特許発明に係る甲製カセットの販売等を行っていないことは、甲の損害額の算定につき,同法102条2項の適用を否定する理由にはなりません。

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●最高裁昭和60年(オ)第381号

置換可能性・置換容易性/均等論/権利侵害

 [判決言い渡し日]
昭和62年5月29日
 [発明の名称]
皮はぎ機における原木の作業位置調整装置(他)
 [主要論点]

 [判例の要点]
 登録実用新案(又は特許発明)の技術的範囲に均等論を適用するためには、(少なくとも)次の2つの条件を具備しなければなりません。
 置換可能性
 置換容易性 


 [本件へのあてはめ]
①請求の範囲のシリンダ機構と係争物のクランク機構とは、腕桿を昇降させる目的において同一です。またその方法として、シリンダ機構は直線往復運動をすることによるのに対して、クランク機構は回転運動を往復運動に代えることによるのですが、いずれも往復運動をするという作用効果においても同一です。

②クランク機構は直線運動をもたらす機構として公知の技術であることは明らかであり、これをシリンダ機構に置換することは出願時における当業者であれば容易に想到し得る程度のものです。


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●昭56(行ケ)第93号(拒絶査定不服審判審決取消訴訟)

刊行物に記載した発明の意味/新規性

 [判決言い渡し日]
昭和59年12月20日
 [発明の名称]
多回路スイッチ
 [主要論点]

 [判例の要点]
 新規性の規定(特許法第29条第1項第3号、実用新案法第3条第1項第3号)における“刊行物に記載された発明又は考案”とは、刊行物の記載から一般の当業者が了知しうる技術的思想をいうものと解されます。


 [本件へのあてはめ]
 引例の出願人が意見書で「引例のシールド板はアースに落とされないもの」と述べていたとしても、一般当業者はその意見書の存在を知る由もなく、また引例の記載自体にそのような出願人の真意を窺うに足りる記載を見出すことができないから、当該意見書は一般当業者がその技術常識によって引例記載のシールド板は当然アースに落とされるべきものとして理解することを妨げるものではありません。


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●平成22年(行ケ)10282号

事後分析(後知恵・ハインドサイト)の排除/進歩性

 [判決言い渡し日]
平成23年10月12日
 [発明の名称]
レーザーによって材料を加工する装置
 [主要論点]
引用発明と正反対の思想に至ることが容易であるとの判断がハインドサイト(後知恵)となるか否か。→阻害要因


 [判例の要点]
 不都合の原因が判っても、従来技術の思想を転換して当該不都合を解決するための思想に自然に到達し得ると推察することは、後知恵(ハインドサイト)的な論法であります。


 [本件へのあてはめ]
 「熱レンズ」は液体にレーザービームのエネルギーが供給され続けることによって生じることが解明されたとしても,判明した原因を除去する解決手段は1つに限定されるものではありません。

 しかも引用例の思想(液体を「準停留状態」にすることによって所定の課題を解決する)から「液体がよどむことなく流れる」との本発明の思想に想到するためには発想の転換が必要です。

 従ってその思想を自然に想到しうるものとした審決の論法は,後知恵(ハインドサイト)的な論法であり,誤りです。


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●平8年(ワ)第22124号

機能的な文言の解釈/技術的範囲の解釈

 [判決言い渡し日]
平成10年12月22日
 [考案の名称]
磁気媒体リーダー
 [主要論点]
請求の範囲に機能的記載をしたことによる権利範囲の減縮解釈


 [判例の要点]
 請求の範囲に記載された発明・考案の構成が機能的、抽象的な表現で記載されている場合において、当該機能ないし作用効果を果たし得る構成であればすべてその技術的範囲に含まれると解すると、明細書に開示されていない技術思想に属する構成までもが技術的範囲に含まれ得ることとなるときには、明細書の記載を参酌し、そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて技術的範囲を確定すべきものと解するのが相当です。


 [本件へのあてはめ]
①実用新案登録請求の範囲のうち「上記磁気ヘッドが下降位置にあるときは上記磁気ヘッドの回動を規制し、」との記載は、「磁気ヘッドがホームポジション又はエンドポジションで停止しても磁気ヘッドが正常な姿勢でいるようにした」という本件考案の目的そのものを記載したものにすぎず、「回動規制手段」という抽象的な文言によって、本件考案の磁気媒体リーダーが果たすべき機能ないし作用効果のみを表現しているものです。

②上記文言は、本件考案の目的及び効果を達成するために必要な具体的な構成を明らかにするものではないと認められるので、明細書に記載した実施例に示された技術的思想に基づいて技術的範囲を確定することが相当です。


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●昭60年(行ケ)第51号

マーカッシュ形式で記載した発明の解釈/選択発明/新規性・進歩性

 [判決言い渡し日]
昭和62年9月8日
 [発明の名称]
鉄族元素とほう素とを含む無定形合金
 [主要論点]
マーカッシュ形式で記載された発明の解釈


 [判例の要点]
①引用発明がマーカッシュ形式で記載されているだけで他に根拠なく、その形式で並記した複数の発明特定事項を均等の効果を奏するものとして、実施例のないものを実施例がある事項と同様に実質的な開示があったとすることはできません。

②他方、本件特許出願に係る発明(選択発明)の多数の実施性が奏する典型的な効果が顕著なものであったとしても、一部の実施例でその効果を奏しないときには、選択発明の特許性は認められません。


 [本件へのあてはめ]
①有機高分子化合物の産業別審査基準は“それに内包される個々の化合物が、その発明において発明の作用および効果上均等であることを認めうる場合以外は原則としてこれ(マーカッシュ形式)を使用してはならない。”と定めていますが、だからといって明細書に実施例として具体的に挙げられていない組成物も、実施例に挙げられている組成物と均等な効果を奏するはずだから実質的に開示されているものとみるべきであるとして選択発明の成立を認めないことは、特許制度の趣旨を考慮した選択発明の成立要件の意義から大きく離れ、不適当です。

②しかしながら、本件特許出願に係る発明に係る45の実施例のうち3例について特許出願人の主張する顕著な効果が発揮されないため、選択発明として特許することは認められません。


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