体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
商標権の効力 |
意味 |
商標権の効力には、指定商品・指定役務について登録商標を独占排他的に使用できる効力(専用権)と、登録商標の類似範囲で他人の商標の使用を排除できる効力(禁止権)とがあります。
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内容 |
@商標法は、商品又は役務(商品等という)の出所混同を防止するべく、商標の出願人に対して商標権を付与しました。
その商標権の核心的な効力として、前述の専用権があります(商標法第25条)。
しかしながら、専用権の範囲の外でも、商標権者の商標と相紛らわしい商標を競業者が使用すると、保護対象である業務上の信用が害され、需要者の利益が損なわれます。
そこで、商標法は、登録商標の類似範囲を出所混同の範囲と擬制して、専用権を防護する機能を持つ禁止権を認め(商標法第37条第1号)、また商標の著名度に応じて、その禁止的効力を防護標章登録により非類似商品等に拡張しました(商標法第64条)。
A専用権の範囲 (a)商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有します。
これは商標権による保護の核心的部分です。
(b)指定商品・指定役務とは、商標法第6条第1項の規定により指定された商品等をいいます。一定の区分に従って指定しなければなりません。→指定商品・指定役務とは
(c)登録商標とは、商標登録を受けた商標をいいます(商標法第2条第3項)。
但し、取引の実情に鑑みて、色彩の特則が設けられています(商標法第70条第1項)。 →色彩の特則とは
(d)使用とは、商品等の関係で商標がその機能を発揮し得る状態に置くことをいいます。 →商標の使用とは
(e)「使用する権利を専有」とは、商標権者が独占的に使用でき、かつ他人の使用を排除できることを言います。
しかしながら二重登録の場合には、一方の登録が無効・取消とならない限り、権利者双方が使用できると解釈されます。法律により使用の権限が保証されているからです。(※1)
→専用権とは
B禁止権の範囲 (a)登録商標の類似範囲内での他人の商標の使用は商標権の侵害と見なされます(商標法第37条第1項)。
文言上は、間接侵害と同様の規定ぶりですが、これは商標権の効力の本来的部分であり、専用権を防護する部分です。すなわち、異なる人間に対する専用権が隣接して存在すると、隣接箇所で出所混同を生じ、無用の紛争を生ずるため、緩衝地域を設けたのです。
(b)登録商標の類似範囲には、同一商標・類似商品等、類似商標・同一商品等、類似商標・類似商品等の3態様があります。
(c)商標権者は、禁止権の範囲で商標を使用する権限がありません。他人の商標権と抵触しない場合に、事実上の使用が許されるに過ぎません。
→禁止権とは
(d)防護標章登録により、禁止権の効力が登録商標の類似範囲の外へ拡張されます。 →防護標章登録制度
C効力の制限
(a)内容的制限
専用権は、他人の権利との抵触(商標法第29条)などにより、また禁止権は、商標権の効力が及ばない範囲の規定(商標法第26条)などにより、それぞれ制限されます。
(b)時期的制限 商標権の存続範囲に限られます(商標法第19条第1項)。
但し、商標権の永続性の要請により、何度でも更新が可能です。
D商標権侵害に対する救済 →商標権とは
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他法との関係 |
特許出願の対象である発明は技術的思想であるため、その技術的範囲にのみ特許権の効力(独占排他的効力)を認めれば足りるのに対して、商標出願の対象は識別標識であり、専用権の範囲(独占排他的効力)を超えて、他人が使用すると識別機能を損なう範囲(出所混同の範囲)があるため、専用権の回りに禁止権の範囲を認めています。
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留意点 |
商標権の効力について判定が請求できます。→判定制度とは
(参考図書) (※1)…工業所有権逐条解説
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