パテントに関する専門用語
  

 No:  1271   

均等論の積極的要件/特許出願

 
体系 権利内容
用語

均等論の積極的要件

意味  均等論の積極的要件とは、特許発明の構成要件のうちの一部を置換することで対象物の実質的な同一性を損なわないことを担保するための要件であり、具体的には置換しようとするものが、対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと、置換することで作用・効果の同一性を損なわないために置換が可能であること、及び当該置換が容易であることです。


内容 ①均等論の積極的要件の意義

(a)均等論とは、発明を文章に表すことが難しく、その文章に拘泥し過ぎると、実質的に特許発明と同一の発明の第三者による実施を野放しにすることになり、公平性に反するため、いわば例外的に、特許発明の構成の一部を置換したものに特許権の効力を及ぼることにするものです。

 特許出願の願書に添付された請求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲を定めるべきものであり(特許法第70条第1項)、請求の範囲に記載された要件を備えていない事物は特許発明の範囲に属しないというのが原則ですから、特許発明との実質的な同一性を担保するためです。

(b)そうした観点から均等論の積極的要件が要求されます。

②均等論の積極的要件の内容

(a)均等論の積極的要件は次の通りです。

・対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと(→均等論の第1要件とは)。

 例えば鈎と鈎とからなる先行技術の欠点(不意の剥離を生じ易い)と解消するために、鈎とループとからなる発明に想到したときには、そのループが発明の本質的事項です。このように本質的部分は、特許出願人が解決しようとした発明の課題を参酌して判断されるべきです。

・相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること(→均等論の第2要件とは)。

 例えば2室を包含するシリンダアンプルの後部可動壁をネジ機構を用いてゆっくり動かすことで2室内の2液を混合させることにより、敏感な薬剤を調合する方法の発明において、請求の範囲に「ほぼ垂直に保持」という文言が含まれており、これに対して、針先を水平に近い斜めの状態として注射をする方法は、置換可能とされた事例があります。

 “ネジ機構を用いてゆっくり動かす”ことが発明の本質的要件であり、そのことの作用効果は、注射器を縦にしても、横にしても同じだからです。

・相違部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において容易に想到できたこと(→均等論の第3要件とは)。

 例えば「生海苔の遺物分離除去装置」の事件において、「回転盤と環状枠板部とをクリアランスを介して組み合わせるに当たり、本件特許発明の1の構成(環状枠板部の内周縁ないに回転板を内嵌めするもの)を、被告製品の構成(底板2の上方に回転盤3が設置されるもの)に変更することは、設計上に微小な点を変更するにすぎない」として置換容易性を認めたという例があります。

(b)均等論の積極的要件の立証責任は、特許侵害訴訟の原告(特許権者)の側にあると解釈されます。


留意点

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