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 パテントに関する専門用語
  

 No:  722   

機能的クレームを作成するときの留意点/特許出願

 
体系 特許申請及びこれに付随する手続
用語

特許出願人が機能的クレームを作成するときの留意点

意義  機能的クレームとは、機能的表現により発明を特定するクレームをいいます。ここでは特許出願人が機能的クレームが作成するときの留意点を説明します。


内容 @機能的クレームが明細書の記載により十分に裏付けられているか

 機能的クレームにおいては、機能自体が重要であってそれを実現する手法はなんでもよい場合(特にソフトウェア発明)と、機能を実現する手法が大事であり、機能はそれらの手法を表すための総括表現である場合(特に機械的発明)があると言われています。後者の場合には、機能的クレームが明細書に十分に裏付けられているかが問題となります。

 「磁気媒体リーダー」事件(平成8年(ワ)第22124号)では、昇降する回動ヘッドの回転余地を上限位置で小さく下限位置で小さくするために、上位概念(回転規制板)及び下位概念(係合孔及びピン)という二段階の構成を開示していますが、保護を求める発明の範囲全体について、開示がされているとは言えません。

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 機能的クレームは、特許出願の発明な詳細な説明に記載した実施例を拡張ないし一般化したものであって当業者が認識できる範囲を超えないことが必要です。

 そうでないと、発明の詳細な説明に記載されていない発明について保護を求めたことになる(特許法第36条第6項第1号違反)からです。

A機能的クレームの機能表現が明確であるか

 「ボールベアリング自動選択、組立装置」事件(昭和44年(ワ)第6127号)では、「選出した中間部品は計測手段と協力する組立手段により、検査された内外両部品と組み立てられる」という表現をしていますが、“協力する”という言葉はそれ自体はっきり分からないし、明細書にも用語の定義などの記載はありませんでした。

 外国の特許出願では「協力」・「実質的」のような、また日本の特許出願では、「係合」のような独特の言葉を多用する明細書を見かけますが、審査官や裁判官には理解しにくい言葉です。明細書作成者としては、こうした表現を安易に使用しないこと、発明説明書にこうした表現があればどういう意味で使っているのかをよく確認することが必要です。

B機能的クレームに対して、均等論の適用は期待できない。

 機能的クレームであるから、必ずしも一律に均等論の適用が否定されるというものではありませんが、少なくとも特許出願の明細書を記載している段階では、それを期待しないという心構えが必要と思います。

 いわゆる均等論は、「相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること」を要件の一つとします。作用・効果≒機能と考えると、もともと機能を発明特定事項とした機能的クレームにおいて、その機能を別の機能に置き換えると、前記要件に違反する可能性があります。これをクリアしても、機能を別のものに置き換えるとすると、置換容易性をクリアできない可能性があります。

 例えばパソコン等の器具の盗難防止用連結具事件(平成 24年(ネ)第 10094号)では「主プレートと補助プレートとを、スリットへの挿入方向に沿って相対的にスライド可能に係合し」という要件のうち「スライド可能に係合し」という箇所の解釈が問題となった事案です。裁判官は、「機能的クレームについてのみ,文言侵害が否定されたからといって,均等論の適用が当然に否定されるべき理由はない。」としながら、結局は、容易置換性を欠くという理由で、均等論の主張を退けています。

C機能的クレームにおいても必要により上位概念・中位概念・下位概念のクレームを作成することが必要か否かを検討する。

 前記Bで述べたように機能的クレームへの均等論の適用が期待できないとすると、特許出願の準備段階で、一つの機能から上位の機能、或いは同位の機能がないかをよく考えておくことが奨励されます。

 例えば「貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置」事件(昭和50年(ワ)第2564号)では、「鍵2の挿入または抜取りにより硬貨投入口8を開閉する遮蔽板9」という表現が、課題の提示に過ぎないと裁判官から評価されました。

 これを例えば“鍵挿入口に鍵を挿入するときの直線的な押し込み力を回転力に変換して、硬貨投入口を開閉する遮蔽板を動かす回転力に変える機構を設け”というような表現にすれば、課題の提示に過ぎないとは言われなくなるでしょうが、その代わりに、鍵挿入口に鍵を入れた後で回すときの回転力を利用して遮蔽板を動かす態様や、鍵挿入口に鍵が入ったことを位置センサなどで検知して遮蔽板を動かす態様に関しては、おそらく、均等論の主張は認められないと考えられます。こうした発明の態様を特許出願人が必要とするかどうかは分かりませんが、必要であれば予め明細書に開示しておく必要があります。


留意点  米国特許出願の機能的クレームにおいて、単一の手段として機能を表現するシングルミーンズクレーム(single means claim)は認められないことに留意するべきです。


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※ 不明な点、分かりづらい点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。


 

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