体系 |
商標制度に関する事項 |
用語 |
登録主義の弊害防止の措置 |
意味 |
登録主義の弊害防止の措置としては、不使用登録商標の排除、並びに未登録周知商標の保護があります。
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内容 |
@登録主義とは、実際の使用の有無を問わずに一定の要件を具備する商標を登録し、商標権を付与する主義をいいます。ここでは、登録主義の弊害に関して簡単に説明した後に、弊害防止の措置を解説します。これらは、商標権者に対抗する措置として有用だからです。
A登録主義の弊害 登録主義は、未必的可能性としての信用を保護できるという利点がありますが、その反面で次のような弊害があります。
第1に、登録したままで使用されない、いわゆる未使用登録商標の存在により、他人の商標使用が制限されること。
第2に、他人の未使用周知商標に対する保護に欠けるおそれがあること。
B弊害主義の弊害防止の措置
商標法は、商標出願の要件として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」であることを要求しています(商標法第3条第1項柱書)。
現実の使用の事実はなくても商標出願人自身に使用の意思があることを明らかにするためです。それでも使用されなくなった登録商標を排除するために次の規定をおいています。
(A)不使用登録商標の排除
(a)この弊害を直接的に除去するための制度として、不使用による商標登録取消審判(商標法第50条)があります。
(イ)これは、商標権者が指定商品・指定役務に関して登録商標を使用していない場合に、一定の条件の下で、何人も登録取消の審判を認める制度です。
(ロ)不使用登録商標を個別に排除するための措置です。 →不使用による登録取消審判とは
(b)この弊害を間接的に除去するための制度として、商標権の存続期間の更新申請制度があります。すなわち、商標権の存続期間を無期限とするのではなく、一応の区切りをつけて継続を希望する者に対して更新料の支払いを条件として更新の申請を認めたのです。
事業の廃止などにより商標権の継続を希望しなくなった人にとっては、更新料を支払う理由がありませんので、不要となった商標権は更新時期に自然淘汰されるものと期待されます。
→商標権の存続期間の更新制度とは
A未登録周知商標の保護 (a)周知商標に対する一般的・具体的出所混同防止の規定(商標法第4条第1項第10号、第15号)
他人の周知商標と混同を生ずる商標を登録対象から除外することで、主として未登録の周知商標主を保護しています。
(b)不正目的でする、他人の周知周知商標と同一・類似の商標の出願を拒絶する規定(商標法第4条第1項第19号)
出所混同の有無を問わずに、周知商標に対する図利的な目的・加害目的の出願を排除しようとしています。
(c)先使用権(商標法第32条) 周知商標の所有者に先使用を条件として商標権に対する抗弁権を認めています。
→先使用権とは
(d)不正使用取消審判(商標法第51条、53条)
商標権者が周知商標との誤認混同をした場合で一定の条件の下で制裁を課する措置です。 →商標権者の不正使用による登録取消審判とは
使用権者の不正使用に関しても同種の制度があります。商標権者に使用権者の使用状況を監督させるためです。 →使用権者の不正使用による登録取消審判とは
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他法との関係 |
特許法では、特許発明が実施されなくても、特許が取消されることはありません。不実施により第三者に対して行政機関の裁量で通常実施権を設定する裁定を行う規定があり、それで十分だとされています。
何故なら、特許出願の対象は技術的思想の創作であり、それが出願公開などに付されることにより、少なくとも文献的な利用には寄与していると考えられるからです。
選択物であり、使用されない限りは保護価値が全くない商標とは根本的に違うからです。
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留意点 |
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